森脇良太「俺、もう無理っす」から愛媛FCに15年ぶりの復帰。「もとはネガティブ」な男はなぜムードメーカーになったのか (2ページ目)

  • 寺下友徳●取材・文 text by Terashita Tomonori
  • photo by ©EHIMEFC, Terashita Tomonori

 それから15年が経ち、森脇は180度変わった。が、本人は意外にもそれを否定する。

「僕のもとはネガティブなんです。悪いプレーをした時や、チームに迷惑をかけた時にはとことん落ち込むタイプですが、落ち込んだあとに『ここから挽回してやる』という強い気持ちは持っている。ただ底抜けに明るいかといえば、そうではないと思っています」

 たとえば、森脇は長年欠かさない試合翌日、翌々日のルーティンワークがある。それは試合映像を流し、自分のプレーを解析すること。パスの質はどうだったのか? もっとこんなプレー選択ができたのでは? なんでこんなミスが起こったのか? 主に見るのは「できなかったプレー」である。

「プレーを振り返っていると奥さんに『あなた、脚の汗がすごいわよ』とツッコミを入れられているんですよね」

 そう言って森脇は、15年前と変わらない屈託のない笑顔を見せた。

2007年、愛媛FCに期限付き移籍していた森脇(後列左) photo by Terashita Tomonori2007年、愛媛FCに期限付き移籍していた森脇(後列左) photo by Terashita Tomonoriこの記事に関連する写真を見る

「ポジティブ」に転換してくれた、ある監督のひと言

「根本は昔とそんなに変わっていない。今でもネガティブな気持ちとポジティブな気持ちが混沌と同居している」

 そう語る森脇。その本質を大きくポジティブ側に転換するきっかけが2008年に訪れた。サンフレッチェ広島への帰還を果たした彼を待っていた、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督。「ミシャ」の愛称で数多くの選手に親しまれ、広島や浦和レッズ、現在はJ1・コンサドーレ札幌で、Jリーグ監督16年目を迎えるセルビア出身の指揮官である。

「ミシャはチャレンジしてのミスに対しては『ブラーボ(すばらしい)』。結果、大きなミスをしても、『責任は俺が取る。ただ、前向きな選択をしたことはすばらしいんだ』という姿勢だったんですよ。このことがあって、僕の気持ちはネガティブ2割、ポジティブは8割に変わっていき、プレー面でミスをしても切り替えられるようになった。プレーの強度や精度を上げるうえでミシャに出会ったことはモチさん同様に大きかったと思います」

 ミシャが残してくれた金言のなかでも忘れられない言葉があるという。

"ネガティブなオオカミと、ポジティブなオオカミが2匹同時に出てきたとしたら、ポジティブなオオカミに餌をやり続けよう"

「この言葉が状況や自分の気持ちをハッピーにさせてくれた。2007年、サンフレッチェ広島はJ2だったんですが、そこで試合に出て経験を重ねるなかで、失敗もしながら自信をつけていけた。試合翌日、翌々日はネガティブなフォーカスをしているんですが、そこからポジティブな方向に向けられるようになったんです」

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