清武弘嗣も脱帽。横浜F・マリノス、変幻自在の攻撃で優勝時の強さが復活

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishuku Torao

「(横浜F・)マリノスはすごく強かったですね」

 試合後のリモート会見で、セレッソ大阪のMF清武弘嗣は、正直にそう振り返っている。試合終了間際、自らのヘディングシュートで劇的に追いついたというのに、敗者のような口ぶりだった。世界で戦ってきた男には、うまくいかなかった試合を都合よく上書きする嘘はつけないのだろう。

「マリノスは立ち位置、ポジション取りがよくて、自分たちも勉強になったというか......。(セレッソも)ボールを受ける位置、サポートの意識を上げていかないと、正直、毎回この試合はきついと思います。たとえばうしろからつなげるところで、1メートル、2メートルのポジションの違い、それぞれが顔を出す必要もあるし、強く(プレスに)来られても(ボールを)失わない技術やメンタルも(必要になる)......」

 引き分けに終わった横浜F・マリノスは、圧勝すべき試合で自ら苦しんだと言えるだろう。

途中出場すると1ゴール1アシストの活躍を見せたアンデルソン・ロペス(中央)途中出場すると1ゴール1アシストの活躍を見せたアンデルソン・ロペス(中央)この記事に関連する写真を見る 2月19日、日産スタジアム。J1開幕戦で横浜F・マリノスはセレッソ大阪を本拠地に迎えている。

 各選手の距離感がよく、練度で圧倒的に上回り、押し込み続けた。ボール回しで先手を取っただけでなく、失ったあとの反応も速く、ポジションでもアドバンテージを取っていた。昨シーズン終盤は、前田大然の得点力に頼りすぎて、ポジショニングやパス回しが雑になり、試合を優位に展開できなくなっていたが、明らかな変化があった。

 ひとつ大きいのは、水沼宏太の先発起用だろう。昨シーズンは先発出場わずか1試合ながら、リーグ2位のアシストを記録。右サイドからピンポイントで合わせるクロスは絶品だが、それ以上にインサイドに入ってプレーメイクもできる。ボランチと数的優位を作って、サイドバックを上げて幅を作るという知性を感じさせるプレーを得意としている。

 セレッソ戦も、右から中央にかけてのパス交換でプレーの渦を作った。15分にはマルコス・ジュニオールらと短いパスを何本もつないだ後、逆サイドへ展開し、松原健のシュートに至る場面があったが、チームとしてパス本数が目立って増えた。32分には、裏に出たボールを水沼が右サイドから狙いすまして折り返し、決定機を演出している。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る