杉本健勇、苦悩の夏。「練習に行くのもイヤ。朝がくるのもイヤで逃げ出したかった」 (4ページ目)
移籍3年目の2021年シーズンは、リカルド・ロドリゲス監督が就任。サッカーのスタイルもガラッと変わった。杉本がFWのファーストチョイスとなり、開幕からスタメン出場を続けた。
「開幕戦のFC東京戦で、すごくいいサッカーができたんです。自分も最初から使ってもらっていましたし、チームとして『こうやろう』というイメージもできていて、それがブレなかった。
ただ、チームのためにやろうという意識が強すぎてしまった。中盤に下がってプレーすることが多くなって、ゴールに近いポジションでプレーする回数が減ってしまったんです。その結果、チャンスを生かせなかった」
開幕から6試合連続先発出場していた杉本だったが、4月に入ると、ベンチスタートに逆戻り。以降、東京五輪開催による中断前まで、スタメン出場は1試合のみだった。そんななか、横浜F・マリノスから杉本へオファーが届いた。
「レッズで試合に出られなかったので、試合に出たい気持ちが強かった。そう思っていた時、F・マリノスから(期限付き移籍の)話があって、(その決断は)ほぼ即決でした」
F・マリノスは当時、川崎フロンターレと首位争いを繰り広げていた。後半戦のキーマンとして、杉本に白羽の矢を立てた。
しかし、F・マリノスはフロンターレと同様、独特な攻撃サッカーを展開。そういったチームに途中から入って活躍するのは、決して簡単なことではない。それでもなぜ、杉本はF・マリノス入りを決めたのか。
「おそらく、移籍せずにレッズにいたほうが自分的にはラクだったと思うんです。途中出場が多かったですけど、自分の役割はわかっていたので。でも、そういうのに慣れるのがイヤなんですよ。
もちろん、夏の移籍に限らず、どんな移籍でもパワーを使うし、慣れるまで時間がかかる。まして、F・マリノスが特殊なサッカーをしていたので、『大変だろうな』って思っていました。それに、このままレッズにいてダメになったと思われるより、F・マリノスに挑戦してダメだったと言われるほうが、自分的にはキツいなというのもありました。
でも、勝負したいなって思った。だから、あえて厳しいほうを選択しました」
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