J1リーグ3連覇のキーマン、脇坂泰斗26歳。「ミスターフロンターレ」中村憲剛の魂を受け継ぐ男 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【現状維持は停滞の始まり】

 その手応えを示すように、ピッチでの存在感は年々増している。

 ただし、"未来"の自分に自信をみなぎらせるも、決して"今"に満足していない。

 現状維持は停滞の始まり----。これは、脇坂が背負うことになった背番号14の前任者、中村憲剛が常に発していた言葉でもある。番号だけでなく、その魂をも受け継ぐ脇坂もうなずいた。

「試合の流れを変えたり、落ち着かせたりするプレーの回数をもっと増やしていきたいんです。そういう意味で、自分はまだ、チームが悪い時に何かができる選手になりきれていない。あと、欲を言えば、流れを変える必要のない状況にチームを導きたい」

 そのために志すプレーについても教えてくれた。

「チームがリードを奪えていない時やうまくいっていない状況で、うしろが手詰まりになった時に、自分が立ち位置を変えることによって解決策を提示したい。多少厳しいボールが自分に入ってきたとしても、僕のところで落ち着かせて展開するとか。

 苦しい状況の時に、もっと何かアクションが起こせる選手になりたいんです。そこはまだまだ足りないと感じています。これは僕個人だけでなく、チームとしてもレベルアップしなければいけないところかもしれません」

 リーグ3連覇を目指す2022年、川崎はそこに挑むことになる。何より、リーグ3連覇に挑むのはチームとして2度目となる。前回は達成することができなかったが、同じ轍を踏まないために、チームが掲げているのが「スピード」だという。

「鬼木(達)監督からもスピードを上げていこう、という話がありました。それは単なる速さということではなく、パススピードの速さ、(攻守の)切り替えの速さ、カウンターに出る時のスピード、そうしたプレーを準備するスピードも含めて上げていこうとキャンプから取り組んでいます」

 攻守、プレースピード、判断......足や走る速さといった単純なものではなく、ありとあらゆるもののスピードを上げていく。それは他の追随を許さない、他を圧倒する攻撃を生み出すことにつながっていくだろう。

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