アルシンドが明かす鹿島アントラーズ入団秘話。「日本に来てみないか」ジーコの誘いに「イエス」と即答した
Jリーグ2022開幕特集
アルシンドインタビュー(1)
30年前、Jリーグの開幕とともに、ひとりのブラジル人スター選手が生まれた。アルシンド。今も日本との絆をなにより大切にしている彼から、日本のファンへ向けてのメッセージが届いた。
Jリーグが今年で30周年を迎えると聞いて、感無量だ。あれからそれほどの月日が経ったのか。日本での経験の数々は、私の人生の最も大切な場所を占めている。日本での思い出、日本への想いを、今、頭に浮かぶままに語りたいと思う。
スピードと得点力で鹿島アントラーズの攻撃の中心となったアルシンドphoto by Yamazoe Toshioこの記事に関連する写真を見る 正直、鹿島アントラーズからオファーを受けるまで、日本のサッカーについて知っていたことといえば、インターコンチネンタルカップが日本ではトヨタカップと呼ばれていて、試合は東京の「コクリツ」で行なわれているということぐらいだった。それも、なんとなく「鶏っぽいなあ」というイメージからだ(ブラジルでは鶏の鳴き声は「コッコリコ」)。本当にそれぐらいしか知らなかった。
だからある日、ジーコが私に直接電話をしてきて「日本に来てみないか」と誘われてからは、注意して映像で日本のサッカーを見るようになった。最初に印象に残ったのはそのスピードだった。プレーのスピード、選手の走るスピード。日本のサッカーはとにかくすごく急いでいるという感じがした。
これはブラジルのサッカーではあまり見られない傾向だった。なぜなら我々はスピードよりも美しいプレー、「ジョガ・ボニート」を重視するからだ。もう少しゆっくりボールを回しながら、いかに見事にプレーをするかを考える。それが我々のサッカーだ。
でも、打診を受けてからほとんど間を置かず、私は「SI(イエス)」と答えた。即答に近かったから、ジーコも驚いていたのではないかと思う。もちろん、オファーの金額がすごくよかったことも大きい。それは当時、私がブラジルで得ていた報酬よりはるかに高かった。
ただ、それだけが理由ではない。すでに日本で半年プレーしていたカルロス・アルベルト・サントスや、2年近くいるジーコから直接日本の話を聞いたが、彼らは口をそろえて、ブラジルよりもずっと落ち着いた環境でプレーできると言った。暴力もなく、非難されることもまずない。
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