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「ストライカーとして死にかけていました」。ベガルタ仙台降格の陰に、FWとしての生き残りをかけて戦っていた男の葛藤 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Getty Images

【救世主にはなれなかったが...】

 そしてノーゴールだった責任を、彼はストライカーとして背負っていた。ロングボールの競り合い後に相手がよろけたところ、バランスを崩さずに着地し、振りきってゴールに迫った。一流外国人FWを思わせるプレーだった。ただし1対1でシュートまで仕掛けず、横にいた選手にパスを出した。

「あそこでシュートを打てるか、だと思います。一周回ってストライカーになりたい、という思いが強くなりました」

 富樫はそう言って唇をかんだ。

「(2015年に練習生だった当時の)マリノスの周りはみんなうまくて、一番へたくそだな、とは感じていました。そこで、点をとることでしか評価上げられないって思って、夢中でやったおかげで、プロ契約も勝ち取れました。気づかずに毒に侵されていましたが、殻を破るために必要なことは見えて、やるべきことを始められました」

 残留の救世主にはなれなかった。しかし、足がかりになるプレーは見せた。自らのシュートでネットを揺らすことで、富樫は殻を破るはずだ。

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