新天地で復活、吉と出た男たち。今季J1のタイトルは「移籍組」がカギを握っていた (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 爆発的な攻撃力を武器に、一時は独走する川崎の背後に迫った今季の横浜FMだったが、岩田という超のつくユーティリティープレーヤーがいなければ、2位躍進はなかったのではないだろうか。

 その岩田もまた、アカデミーから大分育ち。自身初の移籍には少なからず不安もあっただろうが、大きな飛躍を遂げるシーズンとなったことは間違いない。

 惜しくも東京五輪では登録メンバーから漏れることにはなったが、試合を重ねるごとに消耗し、メダル獲得を逃したU-24日本代表に、もしも岩田がいたら......。そんなことまで想像させる、今季の活躍だった。

 もちろん、移籍がブレイクや復活のきっかけになるのは、日本人選手だけではない。

 アンカーとして川崎の連覇を支えたMFジョアン・シミッチが、その代表例である。

 昨季まで名古屋で2シーズンを過ごしたシミッチは、優れたパスセンスを有しながらも、名古屋のスタイル変更とともに出場機会が減少。そこで、川崎への移籍に至ったわけだが、これが見事にハマった。川崎が連覇への独走態勢を築いたシーズン序盤において、シミッチの働きを見逃すことはできない。

 結果的にシーズン終盤、ルーキーのMF橘田健人にボジションを奪われる形にはなったが、昨季限りで中村憲剛、守田英正が抜けた川崎の中盤にあって、このブラジル人MFがいなければ、シーズン全体の流れが違うものになっていた可能性もある。

 名古屋のルヴァンカップ優勝といい、川崎のJ1連覇といい、今季のJリーグは移籍組がタイトル獲得のカギを握っていた。そんなことが言えるシーズンだったのかもしれない。

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