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槙野智章はずっと「もったいない」男だった。最後の最後で伏線を回収した奇跡のフィナーレ (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【10年前、浦和入りで誓った言葉】

 その姿勢が、奇跡と表現しても大げさではないクライマックスを導いたのだろう。柴戸海の強烈なシュートをしたたかなストライカーのごとく頭でコースを変えて流し込んだゴールで、今季かぎりで去ることになる浦和に天皇杯のタイトルと来季のACL出場権をもたらしたのだ。

「たしかに運を引き寄せる力は人よりはあるかなと思いますけど、特に契約満了と言われてからは、自分がこのチームで最後にやらなければならないことをしっかりと整理して、日々のトレーニングを行なってきました。

 毎日のトレーニングを100%でやること、チームの雰囲気をしっかりとつくり出すこと、トレーニングが終わったあとに誰よりもシュート練習をして、ゴールを取りたいという想いをこの年になっても持ち続けるということを、ひたすらやってきた成果だと思います」

 運を切り開くのは、自らの行動である。10年前、浦和に加入する際に槙野が話していたことを思い出す。

「誰かが変えたいという想いで行動しなければ、絶対になにも変わらない。ひとりが動くことで、チームが変わり、クラブが変わる。そして、サポーターも同じ方向へと向かって行く。そうした流れを生み出すためにも、まずは誰かが動かないといけない。自分が成長することもそうですが、僕は浦和というチームを変えるためにここに来たんです」

 口だけではない。周囲になんと言われようとも信念を貫き通し、最後の最後に自身の存在価値を証明した。

 これまでの"もったいない"がこの劇的なフィナーレの伏線だったとすれば、槙野智章はやはり"持っている"男なのかもしれない。

理想のミシャ&現実の堀。浦和レッズのアジア制覇は指揮官2人の合作

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