徳島ヴォルティスが土俵際で残った理由。「ボールを持つ」を捨てなかった (2ページ目)
それでもポゼッションを捨てず、GKを使いながらパスを回したが、「運べ!」というベンチからの檄に、センターバックが応える余裕はなかなかない。一度、無理に中へパスをつけようとし、狙われてカットされ、カウンターからウェリントンにシュートを浴びた。
「相手のプレスに対し、自分たちがボールを持てることがわかりました。ただ、どこに穴があるのか、ひずみを見つけるのに試行錯誤しながらで......。自分たちはギャンブルに出るのではなく、どこかでチャンスが来るのかを窺いながら、前半は様子を見ていました」(徳島・岩尾憲)
徳島の4-3-3は成熟度が低く、選手同士がアジャストするのに時間がかかった。そこをつかれて湘南に強いプレスを受けていたら、混乱が出ていただろう。ただ、岩尾がボールに触るたび、触らなくても相手を引き出すことで、次第にリズムが出てきた。後半になって湘南が前がかりになったが、逆手に取る余裕があった。トップの垣田裕暉が抜群のキープと反転力を見せ、攻撃の芽が出ていた。
後半18分に、徳島の2人が交代した後だった。右FWだった宮代大聖が左インサイドハーフに入っていたが、これがテンポを生む。絶妙な間合いで左にスルーパスを入れると、それを受けた田向泰輝がクロスを入れ、ブロックされたが左CKに。これを岩尾がサインプレーで、ファーへめがけて配球。エリア外から飛び込んだ宮代がダイレクトボレーを打ち込み、いったんはGKに防がれたが、こぼれ球を岸本武流が押し込んだ。
「Paciencia」
徳島のダニエル・ポヤトス監督は「我慢」と総括していたが、徐々に押し込んで戦い、用意したセットプレーを決めた。"してやったり"の心境だったはずだ。
湘南は最近の5試合、交代カードで展開を好転させてきた。しかし徳島戦は不発だった。徳島が垣田を下げて投入したムシャガ・バケンガが全く機能せず、優位に運べる状況だったが、パワーを出すことができなかった。チームメイトを失った悲嘆の影響がないはずはない。
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