名古屋グランパス・稲垣祥がセレッソ大阪にトドメの一撃。抜きん出たゴール嗅覚で今季はエース級の活躍 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

「あんなにいいこぼれ球をくれるなら決めなければいけなかった。冷静に叩きつけることを意識しながら打てましたね」

 C大阪の息の根を止める起死回生の豪快ボレーは、進化を遂げた今季の稲垣を象徴する一撃だった。

 それでもやはり、稲垣は守備の選手である。守りの時間が長くなるなか、この日も誰よりも長い距離を走り、スペースを埋め、相手のボールを奪い取った。

 かつて、稲垣はボール奪取の秘訣をこう答えている。

「間違いなく大事なのは予測です。自分がボールを奪えている要因の半分くらいはそこにあると思います。あとは小さい時からボールを奪うところにフォーカスしてきたこと。もう半歩だったり、30センチでもいいので、少しでも相手との間合いを近くして寄せにいくということを、学生の時からずっとやってきました。そこをこだわりながらやってきたからこそ、今の自分があると思います」

 このファイナルでも、その寄せが光った。とりわけ中央でのプレーを好んだ乾貴士には、鋭い寄せと激しい対応で苛立ちを誘っていった。C大阪の攻撃のキーマンを封じ、とどめの一撃を突き刺したのだから、掛け値なしのMVPである。

 稲垣がMVPなら、陰のMVPは中谷進之介ではなかったか。

 キャプテンマークを巻いた25歳のCBは、猛攻にさらされた最終ラインを最後まで冷静にまとめ上げた。

 名古屋のキャプテンは本来、丸山祐市が務めるが、5月に今季絶望の大ケガを負い、以降は中谷がその大役を担ってきた。

「キャプテンだからと意識しないようにしてきましたが、やっぱりチームの先頭に立つ人間だと思っています。自分の背中を見てみんなが動くと思っているので、キャプテンらしく振る舞うのではなく、日々の練習、日々の生活から真面目に素直にサッカーに向き合うことで、みんながついてきてくれると思っています」

 そんなキャプテン像を語る中谷が、アカデミーから育った柏レイソルから名古屋に加入したのは2018年途中のこと。当時、降格の窮地に立たされたチームを残留に導く活躍を見せると、2019年からは2シーズン連続で全試合にフル出場。今季もフィールドプレーヤーでは吉田豊、稲垣に次ぐ出場時間を記録する堅守の中心人物は、英語も堪能で試合中にGKランゲラックの言葉を伝える役割も担うという。

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