中村憲剛&佐藤寿人が目指す指導者論。「最終的には自分の素のところが出るんだろうな」
中村憲剛×佐藤寿人
第6回「日本サッカー向上委員会」@後編
1980年生まれの中村憲剛と、1982年生まれの佐藤寿人。2020年シーズンかぎりでユニフォームを脱いだふたりのレジェンドは、現役時代から仲がいい。気の置けない関係だから、彼らが交わすトークは本音ばかりだ。ならば、ふたりに日本サッカーについて語り合ってもらえれば、もっといい未来が見えてくるのではないか。飾らない言葉が飛び交う「日本サッカー向上委員会」、第6回はふたりの「監督論」について語ってもらった。
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バイエルンの新指揮官ユリアン・ナーゲルスマンはまだ34歳この記事に関連する写真を見る佐藤 憲剛くんは、監督デビューはまだですか?
中村 当然、まだだけど。
佐藤 俺はあるんですよ。
中村 えっ、どこで?
佐藤 知り合いが指導する小学校3、4年生のチームを見てくれと言われて、一度大会で指揮を執ったんです。選手を交代も含めて決断していく作業は、小学生のチームでも面白かったですよ。
そのなかでひとり、シュートがなかなか入らない子がいて。代えてもよかったんですけど、なんとか取らせてあげたいなと。惜しいところまで行っていたからプレーを続けさせたら、最後に点を取ってくれたんです。
そこは自分の決断がうまくハマったところで、充実感もありました。小学生のチームでもこれだけやりがいがあったわけだから、もっと上のカテゴリーになれば、かなり面白いだろうなと思いますね。
中村 それこそ、監督が何を見て、何を求めて、どう決断するか、ということだよね。僕だったら、外しすぎている選手を交代させていたかもしれない。それで、その子は落ち込んで、自信をなくして、サッカーを辞めてしまうかもしれない。それくらいの岐路だった可能性もあるんですよ。
ただ、寿人が我慢して使ったことで、その子は成功体験を得られた。これをきっかけに大きく成長する可能性もあるんですよ。だから、個人的に思うのは、プロで出会う監督よりも育成年代に出会う指導者のほうが、重要かもしれないということ。
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