日本サッカー界のキャリアプランが一変する!? 三笘薫、林大地、大学組の海外移籍は「事件」だ (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Panoramic/AFLO

 ただ、その不利は一方で、Jクラブにとっては大学組を獲得するメリットになり得ていた。

 年齢的に海外移籍の心配が少ない大学組は、必然的に長くクラブで活躍してくれる可能性が高くなる。すなわち、長期的なチーム強化を見通しやすくなるのである。昨季J1王者の川崎に、DF谷口彰悟、FW小林悠をはじめとする大学組の主力が多いのも、決して偶然ではないだろう。

 よくも悪くも先が見えない高卒の選手に比べ、即戦力として計算できる選手を、しかも移籍金(違約金)なしで獲得できるのだから、Jクラブにとって大学組は非常にありがたい存在だった。悪い言い方をすれば、Jクラブは大学組を便利に活用してきた面が少なからずあったわけである。

 ところが、三笘や林のように大卒2年目の夏、すなわち、Jリーグでの実働1年半で海外移籍できるとなると、話は変わってくる。大学を経由しても、24歳がリミットと言われる海外移籍の足かせにはならない。その前例が作られたからだ。

 ただでさえ、高卒でプロ入りした結果、2、3年試合に出られずくすぶるくらいなら、大学で実戦経験を積み、4年後に即戦力としてプロ入りするほうが得策。そう考える選手が増えているのである。

 まして、下手なJクラブよりも充実した練習設備を備える大学は多いのだから、大学でプレーすることの価値は今まで以上に高まっても不思議がなく、対照的にJクラブは、大学卒業後のわずかな期間所属するだけの"踏み台"になりかねない。

 それどころか、三笘や林のようなケースが今後増加すれば、海外クラブの出方次第では、大学から直接海外へというルートが(これまでは単発で終わったが)いよいよ確立されていく可能性もあるだろう。

 大学組でありながら、24歳にして実現させた海外移籍は、単に若い選手が海を渡ったという以上の意味を持っている。

 これをきっかけに、キャリアプランの常識が大きく変わっていく。そんなこともあるのかもしれない。

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