前田大然だけじゃない。横浜F・マリノス、強さの秘密。首位・川崎を照準にとらえた

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 松岡健三郎●写真 photo by Matsuoka Kenzaburou

 横浜F・マリノスの勢いが止まらない。8月15日、雨に煙るニッパツ三ツ沢球技場で大分トリニータを5-1で撃破。これでリーグ戦は直近10試合、9勝1分けと無敗だ。

「マリノスを相手にした場合、走らないといけないし、球際も戦わないと。それをやめてしまえば、途端に彼らのペースになる」

 試合後、大分の片野坂知宏監督は、やや憔悴気味に語っている。

「守備の仕方はいろいろありますが。マリノスには前から行けば、はがされる(リスクがある)。構えてブロックを作って守れば、失点は少なくできるかもしれませんが、サンドバックのようになって守備で疲弊し、攻撃のパワーを出せない。そこで思い切って前から行って得点をとって、粘り強く戦えたらと思いましたが......」

 健闘及ばず、一敗地にまみれた。

 横浜FMは破壊的な攻撃力で、首位を走る王者・川崎フロンターレに勝ち点6差と迫っている。数字的には照準にとらえたと言ってもいい。最終節は直接対決、本拠地で挑める。

「クラブのアイデンティティを大事に、より攻撃的に戦いたい。チームとして何が大事か、選手は全員、わかっている」

 この夏、新たに就任したケヴィン・マスカット監督はそう語って、戦い方をほぼ変えていない。6月にアンジェ・ポステコグルー監督が去った直後は混乱もあったが、松永英機監督の暫定政権でバトンをつなぎ、「継続・踏襲」で失速を食い止めた。

 横浜FMの逆転優勝はあるか?

圧倒的な攻撃力で、前節は大分トリニータを5-1で破った横浜F・マリノス圧倒的な攻撃力で、前節は大分トリニータを5-1で破った横浜F・マリノスこの記事に関連する写真を見る 大分は横浜FMを相手に、悪い戦いをしたわけではない。高くラインを保ち、ライン間を緊密にし、前線からプレッシング。打ち合いを挑み、ゴールに迫った。前半15分頃には立て続けにチャンスを作り出し、敵地で互角以上の戦いをしていた。前からボールを奪い、あるいはボールを蹴らせて回収する。戦略どおりだったはずだ。

 しかし、横浜FMは押し込んだ時の精度で違いを見せた。前半30分、短いパスをつないでスペースを作り出す。右サイドを仲川輝人が抜け出し、ゴールラインまで持ち込んでから折り返すと、逆サイドから入った前田大然が先制点を決めた。

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