サガン鳥栖、躍進の理由か。J2から移籍の頭脳的MFが中心となっている (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 鳥栖には現在、日本代表選手はいないが、先月アルゼンチンと戦ったU-24日本代表には2人を輩出していた。FWの林大地(23歳)と左サイドバック(SB)の中野伸哉(17歳)だ。試合開始直後、関心は2人に向かいがちだった。その将来性はどれほどのものかと目を凝らした。

 ところが、鳥栖がペースをつかむ頃になると、こちらの一番の関心は別の選手に移行することになった。背番号44を付けた4-4-2の左センターハーフ、仙頭啓矢がチームの中心選手であることが鮮明になった。

 相手の選手と選手の間に、巧みに入り込み、仙頭はボールを捌いた。ボールを受けると、周囲の選手にジェスチャーを交えながら指示を送り、最適な場所にボールを預けようとした。FC東京のプレッシャーが緩かったことは確かだが、それを差し引いても、その存在感は目を引いた。

 今季、京都サンガから移籍してきた26歳。まさしくC大阪へ引き抜かれた原川の代役である。原川が代表に招集されたのはC大阪に移ってからだが、鳥栖時代の活躍が認められた結果だとすれば、鳥栖にとって原川はただひとりの代表級選手だったことになる。その原川を彷彿とさせる中盤でのプレーを、仙頭は簡単そうに務めていた。

◆Jリーグ序盤戦に見る、今季補強が成功しているチーム「ベスト3」

 ひと言でいえば、視野の広いパサー系のゲームメーカーだ。しかし、こちらの記憶には、もう少し高い位置でプレーすることができる、アタック能力に優れた選手という印象があった。

 昨季、京都でプレーしたのはシーズンの後半からで、前半は横浜F・マリノスに在籍していた。開幕当初はスタメン出場を果たしている。左ウイング、あるいはインサイドハーフとして。

 悪い印象はなかった。スタメンを張り続けることは難しいとしても、出場機会はそれなりに得ることができると見ていた。だが横浜FMでの出場機会はわずか3試合、計140分で終わった。

 京都へは出戻りの格好だった。2017年から3シーズン、仙頭はJ2の京都でプレーした後、横浜FMへ移籍した。初めて経験するJ1の舞台だった。それがわずか3試合の出場で終わった。入ったチームが悪かった。FC東京戦のプレーを見ていると、そう言いたくなった。

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