三笘薫の超絶ドリブルを細かく分析。水沼貴史が指摘する最大の強みとは? (2ページ目)

  • 篠幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Kishiku Torao

 もう一つの特徴は、トップスピードに入るまでの速さ。1、2歩目でもうトップスピードに乗っています。細かなステップのアジリティによって速いという選手は多くいるけど、あの体のサイズで足も長く、ストライドも大きななかで、芝生の上を滑るようにスッとスピードに乗れる選手は、そういないんです。

 次にドリブルですが、三笘はドリブルする時にヘッドダウンをしません。おそらく、必ずしもドリブルで相手を抜くことを優先して考えていないのだと思います。ドリブラーは、目の前の相手を抜きさるプレーに固執してしまいがちなんですが、三笘にはそれがないんですね。

 パスのほうが有効だと思えば躊躇なくパスを出すし、一旦味方に預けたほうがいいと思えば簡単に預ける。とにかくドリブルしながら、ドリブル以外の選択肢を多く持っていて、常に最良の判断ができます。それだけに相手DFは三笘のプレーの的が絞れず、その結果ドリブルの対応も後手を踏んで抜かれてしまう。さらに彼がトップスピードに乗るのが速いので、一度外されたらはもう追いつけません。

 加えてシュートも抜群です。サイドからカットインしていくのは、どの選手でもよく見る形ですが、三笘はカットインしてすぐにシュートを打てますし、そこで打てなかったとしてもそれをフェイントにさらに進入して打ったり、相手の股が空いていればそこを狙うこともできる。ニアにもファーにも打てる形を持っているので、シュートにおいても選択肢がとにかく多いですね。

 ドリブルのインパクトが強烈ではあるんですが、彼の目的はそこにはない。常にゴールのために何が必要かを考えながらドリブルできるのが、三笘の最大の強みです。

 ドリブルで相手を抜いていくシーンでは、似たような形が多いですね。それは再現性が高いということ。同じ質のドリブルを繰り返せるのも、ドリブラーとして優れている部分です。

 相手チームが意識して研究もしてくるなかで、それでも同じシチュエーションになった時に抜き切れるのは、わかっていても実際に対峙した時の感覚が予測の範囲を超えているんだと思います。そのくらいのスピードやキレのすごさが、三笘にはあるのでしょう。

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