今季アントラーズは強し。だが本当に「打倒・川崎の一番手」なのか (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by J.LEAGUE/J.LEAGUE via Getty Images

 鹿島がいかにチームとしてうまく機能していたかは、奇しくもシーズン序盤で両チームが対戦した昨季の試合(J1第6節)と比較すると明らかだ。

 昨季の対戦では、ホームとアウェーの入れ替わりこそあれ、主導権を握っていたのは湘南だった。鹿島はボール保持率では大きく上回るものの、パスワークのテンポは上がらず、単調な攻撃を繰り返すばかり。むしろ危ういカウンターを受ける場面も多かった。

 結局、試合は後半にCKから決勝点を奪った湘南が1-0で勝利。

「自分の考えでは、やっていることは間違っていないと思うので、しっかり取り組んで結果につなげたい」

 試合後、鹿島のアントニオ・カルロス・ザーゴ監督が口にしたそんな言葉も、少なからず強がりに聞こえたものだ。

 しかし、現在の鹿島は、当時とは明らかに異なるチームになっている。

 選手同士の距離感は格段によくなり、リズムよく選手が立ち位置を変え、パスをつなぐ。そればかりでなく、ボールを失ったあとの守備への切り替えも速く、しかも効率よく奪い返すことに成功していた。

 ザーゴ監督の言葉を借りれば、「私が監督に就任し、(1年目の)昨年はチームを作っていた」のに対し、「今年は土台ができている」。まだペナルティーエリア内をどう攻略するかについては課題が残るが、チームとしての基本的なボールの動かし方、奪い返し方が確立されてきたことは間違いない。

 若い選手が台頭してきているのも、頼もしい材料となっている。

 この日2点を決めたMF荒木遼太郎は、開幕戦に続く2試合連続ゴール。「自分の結果も大事だが、チームのために走って、これからも戦い続けたい。自分のゴールは周りの選手のおかげ」と言葉は控えめだが、ボールを持ったときの落ち着きと余裕はふてぶてしさすら感じさせるほどで、19歳とは思えないものだ。

 また、24歳のMF三竿健斗が昨季からキャプテンを務め、21歳のGK沖悠哉が最後尾からチームを支える。Jリーグ屈指の常勝軍団は、抜かりなく新陳代謝を図り、同時にチームの強化を進めている様子がうかがえる。

 現在の強さと、将来の伸びしろ。なるほど、今季の鹿島が高い評価を受けるのも納得である。

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