高校サッカー選手権のロングスロー、あれってファウルじゃない? (2ページ目)

  • 清水英斗●文 text by Shimizu Hideto
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 思い出した。そう言えば昔、似たような主張をした覚えがある。あるチームで練習をした時、ウォーミングアップで1タッチの鳥かごをやり、私は中でオニ役だったが、外でパスを回すひとりが足をボールにくっつけたまま、1タッチでクイックイッとL字を描くように、右と見せかけて左へパスを送り出した。軽やかなフェイントに引っかかった私は...、

「離れてない? 今、クイッの時足が離れてない? 2タッチした! 交代、交代!」

 1回目の地団駄は、みんな笑って答えてくれる。でも気をつけてほしい。二度、三度と繰り返すと、

「.........。」

 だいたいこんな空気になる。気をつけて。引き際、大事。

 件のロングスローも、厳密に言えば、何回かに1回は足が地面から離れている気はする。ならば! 副審の方には、腹ばいになって足元をチェックしていただこうか。あるいはプレミアリーグで数ミリのオフサイドさえ指摘できるという、エキサイティングなVARシステムを使い、「足浮いた!」とゴール判定をひっくり返そうか。

 ピッチ内そっちのけでスローワーの足元を撮る、ロングスロー監視カメラを置けば、不可能ではなさそうだ。あっ、1ミリ離れた! 抜群の精度が期待できる。ただし、おすすめはしない。

「.........。」こんな空気になるだろうから。

「まあ、大きく離れてなければ、いいでしょ」「大きくってどのくらい?」「大きくは大きくだよ」。サッカーはその辺、とても大雑把なスポーツだ。VARの出現以降、競技規則もだいぶ細かくはなったが、それでも依然として主観任せの部分は多い。最終的には「だってサッカーだもの」という魔法の言葉でバッタバッタと片付けられる。

 実際、「ロングスローの後ろ足が微妙に浮いたからファウルスロー」と判定される場面はまったく見たことがないので、多少の誤差はOKなのだろう。サッカーだから。

 それにしても、なぜ高校サッカー選手権では、これほどロングスローが流行るのだろうか。Jリーグでもまったく見られないプレーではないが、圧倒的に高校サッカーのほうが多い。

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