ラフプレーをした選手をキャプテンに。永井秀樹監督は何を思ったのか (3ページ目)
高橋は試合終盤、相手選手と競り合い、乗り掛かられた形で倒れ込んだ。その際、報復気味の行為をしてイエローカードを提示されPKを与えてしまった。結局、このPKが決勝点となり、ヴェルディは藤本寛也のラストゲームを勝利で飾ることができなかった。そればかりか、イエローカードやPKの判定を巡りヴェルディ側がベンチも含めて強く抗議するなど後味の悪い幕切れとなった。
高橋はその後、およそ1カ月間、6試合にわたってベンチ入りはおろかメンバー自体から外れた。永井は、そんな高橋にキャプテンマークを巻く機会を与えたのだった。
「祥平は、あの試合で自分のしたことに対してものすごく責任を感じて『寛也には本当に申し訳ないことをした』と猛省していると伝え聞いた。祥平は人におべっかを使うタイプではないし、どちらかと言えば言葉も少ない。本人の性格をよく知らない人たちからは誤解されやすい。でも、そういう言動を伝え聞いて『本当にいいやつだな』と改めて思った。
実際、遠征中に部屋に呼んで、あらためて腰を据えて向き合ってみると、ヴェルディが大好きだし、チームのことを心の奥底から考えていた。育成年代から育って再び戻ってくることができたヴェルディを何とかしたい、という思いが伝わってきた。それだけじゃなくて、『ヴェルディに戻って、今になってサッカーを勉強しているんですよ』という言葉も聞けた。
監督という立場である自分としてもそれは本当、うれしかった。ある意味、感覚に頼ってプレーしてきてJ1でも実績を残してきた選手が、あらためてサッカーを学んでいます、と謙虚になれることは本当にすばらしい。その時に『祥平にもキャプテンを任せても大丈夫だ。いや、ぜひ任せてみたい』と思ったんだよね」
復帰5戦目となる9月27日、首位争いをするギラヴァンツ北九州戦でキャプテンマークを巻いた高橋は、最終ラインから声を掛け続け、身体を張った献身的なプレーで北九州の攻撃を封じ込め、勝利に大きく貢献した。以後は連戦を考慮した休養日を除けば先発フル出場し続け、キャプテンのひとりとしてチームをまとめ、支えている。
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