ゴールから逆算してプレーを選択する中村憲剛らしいキャリアの幕引き (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 それでも当然、引退を惜しむ声は数多い。せっかくケガから復帰したばかりなのに――。誰もが当たり前のようにそんなことを考える。

 だが、中村は同じブログのなかで、ケガについてもこう記している。

〈自分の中では引退の年は変えない、でも絶対に元には戻りたい、そう強く思いました。(中略)実は怪我は今回の引退を決断するという意味では全く関係がなく、怪我をする前から決めていたことだったことはご承知ください。〉

 5年ほど前から「40歳を迎える今シーズンで引退」を決めていたという中村にとっては、ケガからの復帰は目的でなく、いわば手段だった。

 同じケガから復帰を目指している選手のためにも、ケガが引退の引き金になったとは思わせたくない。だから、引退前に復帰しなければならなかった。いまだ戦力になりうることを証明するために。

 言い換えれば、中村は「元気で引退する」という目標のために、ひたすら辛いリハビリに耐え、復帰を目指していたのである。

 ゴールから逆算してプレーを選択する――。彼の代名詞である一撃必殺のスルーパスがそうであったように、自らのキャリアの幕引きまでもが、憎らしいほど中村憲剛らしかった。

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