ポスト室屋成、FC東京19歳右SBが躍動。復元力と育成組織の重要性 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • ヤナガワゴー!●撮影 photo by Yanagawa Go

 右サイドの戦局を支配することで、ゲーム全体を有利にした。

 その後も、中村はボランチのパスを相手のラインを破って受けると、完璧なコントロールから絶妙なクロスを送っている。味方が入るタイミングがわずかにずれ、合わすことはできなかったが、非凡なプレーだった。

<相手選手の逆を取る>

 その点で中村はタイミングが図抜けている。おかげで、ボールキープができるだけでなく、入れ替わって、運び出せる。ラインのずれを巧みに利用し、自ら裏を抜け出せるし、味方に裏へボールを出せる。目を奪う小気味よさだ。

 アディショナルタイムにも、中村はディエゴ・オリヴェイラからのパスを受け、ダイレクトで折り返している。クロスは相手に当たりながら、再びディエゴ・オリヴェイラへ。エリア内でのシュートはブロックされたが、これも決定機だった。

 結局、FC東京は88分にロングパスの処理を誤って失点を喫し、一発で沈んだが、可能性の一端は見せた。中村はその筆頭だろう。

◆「横浜FMのチアリーダーたち」>>

 今シーズン、FC東京はMF橋本拳人、DF室屋成という主力2人を失っている。それぞれ、ロシア、ドイツに移籍。日本代表でもある2人の穴は大きい。

 しかし、苦しい陣容ながら、東京はほぼ週2試合の19連戦をしのぎ切っている。台頭したのは、中村だけでない。ボールを運び、戦えるMF内田宅哉、パスセンスだけで言えばJでも際立っているMF品田愛斗、走力を生かして交代の切り札になったFW原大智など、J1での出場歴が乏しい若手選手が次々に台頭した。

 FC東京が戦力的に健闘できている要因には、FC東京U-23の存在があるだろう。今シーズンはコロナ禍の影響で活動を中止しているが、中村、内田、品田、原は、いずれも2019年シーズン、東京U-23で研鑽を積んでいる。J3とはいえ、プロの舞台で戦ったシーズンは選手を成熟させた。今やキャプテンマークをつけ、日本代表デビューも飾ったセンターバックの渡辺剛も、J3を踏み台にトップでポジションをつかんでいるのだ。

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