「練習が90分で終わるわけないだろ」。ヴェルディ監督が説く根性論

  • 会津泰成●文 text by Aizu Yasunari
  • 松岡健三郎●写真 photo by Matsuoka Kenzaburo

永井秀樹 ヴェルディ再建への道
トップチーム監督編(16)

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「常に美しく勝つこと、見る人もプレーする選手も楽しく面白いサッカーを考え続けている自分が言うのは、少し矛盾に聞こえるかもしれないけれど、現状、ヴェルディは10年以上J2暮らし。この現状を打破するためには、苦しくても、理不尽な思いをしても『限界を超えて戦う』という覚悟が持てるかどうか。そんな覚悟が持てない限りは、何をしてもダメだと思っている」

 夏場の厳しいコンディションと週2回の試合開催という過密スケジュールが続いた中、ヴェルディは3連勝を飾るなど、上位にも食い込んできた。きっかけのひとつとして、永井が大切にする、ある思いが関係しているように思えた。

永井秀樹監督は自分が経験してきたからこそ「根性論」を伝える永井秀樹監督は自分が経験してきたからこそ「根性論」を伝える「自分の考えの基本は『練習しなければうまくならない、戦えない』ということ。これは子供の頃から思い続けている。努力は、嘘をつかない。10年間、J2にいるチームが他のJ2チーム、もっと言えばJ1のチームと同じだけの練習量では、実力の差はつかないし埋まらない。『じゃあやるしかないよね』と強く思う。

 トップチームの監督になってからも、どうしたらチーム力を高められるか、個の力を上げることができるか、常にこだわってトレーニングメニューを考えてきた。まわりからは『ヴェルディの練習時間は長い』とか、いろいろなことを言われたりもする。今年の沖縄キャンプは、おそらくJリーグの全チームで一番多く練習したと思う。『そんなに練習して、どうするつもりだ? 選手が壊れてしまう』と言われたりもした。

 繰り返しになるけど、10年以上もJ2にいて最低限、J1のチームと同じ練習量でいいわけがない。沖縄キャンプは、体力的にはもちろん精神的にも苦しかったはずだけど、『苦しい状況を乗り越えた』という自信を含めて貯金できたことが、今これだけの連戦でも、他チームが選手をローテーションで回す中、我々はそれほど大きくメンバーを変えなくても戦えている理由だと思っている」

 世は平成から令和へと変わった。サッカーに限らず、トレーニングは「量」より「質」が大切と言われ、「科学的な根拠に基づいて短時間で最大限の効率を上げることが大切」というのがトレンドだ。それに基づいて言えば、永井のような根性論はさらにひと昔前の昭和的な考え方であり、大多数から受け入れられないだろう。

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