施されたら施し返す。浦和育ちの23歳が「恩返し」で横浜FCの完全勝利 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「90分ハードワークした選手たちを評価したい。守備の時間も長かったですけど、無失点に抑えられたことも自信になると思います」

 下平隆宏監督は、誇らしげな表情で試合を振り返った。

 今の横浜FCの根幹をなすのは、徹底したビルドアップだ。

 たとえ前からプレスをかけられても、ロングボールには逃げず、近くの味方に預ける。誰もがボールを受けるのを怖がらず、パスコースに顔を出し、たとえミスをしてもすぐさま切り替えて守備に走る。その意識が着実に浸透していることがうかがえる。

「僕のほうから選手たちに、何があっても、苦しくてもつなぎなさいと。そういう話を常々してきた」

 下平監督が求めるように、無理に見えるような場面でも、横浜FCの選手たちはつなぎにこだわってきた。その分、自陣でミスが生まれ、あっさりと失点するケースもこれまでは多かった。

 だが、浦和戦ではそうしたシーンはほとんど見られなかった。その変化を指揮官は次のように指摘する。

「(対戦が)2巡目に入るにあたって、ゲームの流れを見て判断してもいい。苦しければ相手の背後に蹴ってもいいし、守り抜く時間もある。相手を見て、うまくゲームを進めていくことを2巡目からは意識している。今日はそれを選手たちがうまく実行してくれたと思います」

 実際に浦和のハイプレスが強まった後半は、つなぎにこだわらずフィードを蹴り込むシーンが増えたし、守りに徹する時間帯もあった。その状況判断の確かさが、快勝劇の一因となったのだ。

 理想を求めながらも、状況を判断してプレーの選択を変えていく。なりふり構わずスタイルを貫くのではなく、より結果を求めていく姿勢の表れだ。

 その方向転換も、前半戦を終えて十分に戦えるという手応えを得たからに違いない。マイナーチェンジを図った横浜FCが、後半戦のダークホースになったとしても不思議はないだろう。

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