2020.08.25

イニエスタ不在でも勝つ。
神戸は過密日程を戦い抜く手応えを得た

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

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 いいものを見させていただいた。

 ヴィッセル神戸の1点リードで迎えた33分、FKのクリアボールに反応したトーマス・デンが後方から走り込み、右足を強振。まるでロケットミサイルのような弾道は、引力に逆らうかのように伸び上がり、ポストの内側を激しく叩いてゴールに吸い込まれていく。神戸のGKが一歩も動けなかった漫画のような一撃で、浦和レッズが同点に追いつくことに成功した。

下部組織から今季トップに昇格した19歳の小田裕太郎 ケニアにルーツを持つオーストラリア代表CBが、「パーフェクトだった」と振り返ったゴールは、まさにワールドクラスだった。Jリーグではめったにお目にかかれないスーパーゴールに出会えただけでも、埼玉スタジアムを訪れた価値があるというものだ。

 もっとも、本来の目的であった"世界規格"には触れることはできなかった。メンバーリストに「アンドレス・イニエスタ」の名前が記されていなかったのだ。

 前節の柏レイソル戦で負傷交代したことで浦和戦の出場が危ぶまれていたが、案の定の事態である。36歳のベテランに無理はさせられない。トルステン・フィンク監督の判断は至極当然のものだ。

 ところがこのドイツ人指揮官は、実に大胆な発想の持ち主だった。イニエスタだけではなく、前節からスタメン10人を入れ替えて、この試合に臨んだのである。

 先発に名を連ねたのは、これまで出場機会に恵まれていなかった選手たち。その背景には、連戦によるコンディション面に加え、ここ3試合勝利がなかったチーム状態もあるだろう。

「多くの試合があるなかで、ほかの選手たちもいい練習をしてくれていた。彼らにもチャンスを与えるべきだと思った」

 そう語るフィンク監督の決断は、結果的に奏功した。

 15分、先制点を演出したのは、今季初スタメンとなった左SBの初瀬亮だった。ボールを受けると躊躇なく縦に仕掛け、低い弾道のクロスを供給。これを小川慶治朗が押し込んで、幸先よくリードを奪った。