2020.08.24

生まれ変わる横浜F・マリノス。
連覇へ向けキーマンたちが違いを作る

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

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 昨シーズン、横浜F・マリノスのサッカーは他を圧倒していた。とりわけリーグ戦終盤の11試合は、10勝1分けと無敵。31得点を挙げての逆転優勝で、ド派手に相手を粉砕する攻撃力が際立った。

 今シーズンもそのサッカーを踏襲する形で挑んでいるが、序盤は得点数よりも失点数のほうが目立ち、波が激しい。緻密さと強度を必要とするコンビネーションサッカーだけに、フィットするのに時間を要するのだろう。実は昨シーズンも第12節終了時点だと6位だった。

 この夏には選手の大幅な入れ替えもあり、遠藤渓太をウニオン・ベルリン(ドイツ)に送り出す一方、天野純、小池龍太、前田大然、ジュニオール・サントスなどを次々に獲得している状況だ。

 生まれ変わる王者・横浜FMはこれから追い上げ、連覇することができるのか。そのキーマンとなるのは――。

サンフレッチェ広島戦で先制ゴールを決めたマルコス・ジュニオール(横浜F・マリノス) 8月23日、日産スタジアム。9位の横浜FMは、8位のサンフレッチェ広島を迎えている。前半は堅守に阻まれて、パスがつながらず、攻め切れない場面が目立った。前線にストライカータイプの推進力の高い選手を多く並べたことで、攻撃がいくらか単調になったか。不安視される守備も、簡単にサイドを破られ、クロスから決定機を作られるなど、万全ではなかった。

 しかし、どんな時もチームの潮目を作るのが、エースである。

 4-2-1-3のトップ下に入ったブラジル人マルコス・ジュニオールは、ピッチを上下しながらゲームを作る一方、前線にも果敢に飛び出し、守備ではプレッシングのスイッチになっていた。単純なターンひとつとっても技術は高いが、それ以上に戦術的な仕事の質は抜群だった。

 たとえば、彼が全力疾走するだけで、相手の最終ラインを下げ、ボランチを引きつけられる。プレーを読み、動かし、作る力だ。

 前半44分だった。ハーフタイムが近づき、両者ともにわずかに緊張がゆるむ。一度、マルコス・ジュニオールはボールを受けに入るが、そこには出てこず、外に流れた後、再び外からパスを受けるポジションを取る。すると、すり抜けたボールが足元に来て、それを左足で流し込んだ。"ごっつあんゴール"にも映るが、高い集中力と次の予測を繰り返し行なっていないと、ボールはこぼれてこない。