元バルセロナの重鎮に絶賛された「美しく勝つ」永井秀樹のヴェルディ (2ページ目)

  • 会津泰成●文 text by Aizu Yasunari
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 攻撃的なポジションの選手は、フォワード出身の藤吉信次コーチが担当し、守備的な選手は、「現役時代から卓越した技術で、常に考えながらボランチでのボール奪取をこなしてきた守備職人」と永井が信頼を置く菅原智コーチ。内部昇格したばかりの若手はおもに、永井とともにヴェルディユース時代から指導してきた保坂信之コーチ。キーパー陣は、ブラジルでのプレー経験もあり、新守護神GKマテウスとも堪能なポルトガル語でコミュニケーションのとれる沖田政夫GKコーチが受け持つ。

 さらに、担当コーチが各選手にアドバイスするための映像分析だけでなく、永井自身がパズルを組み合わせ全体の大きな絵を描くために必要な資料は、「スペイン・バルセロナ元在住のサッカーフォトグラファー」という異色の経歴を持つ鈴井智彦分析コーチが担当し、現在に至るまでのスタイル構築を支えている。

 この取り組みのヒントは、四半世紀前、永井がイタリアで見たある光景が影響していた。

「25歳の時、ACミランの練習を観に行くチャンスに恵まれた時、トレーニング場にものすごく大勢のコーチがいて驚いた。話を聞いてみると、『あそこにいるコーチは、シュート専門のコーチ。隣にいるのは守備の際の1対1の対応。で、あそこにいるのは、セットプレー専門のコーチ。あれは......』みたいな感じで説明された。すごく緻密にメニューを組んでアドバイスしていた。

 Jリーグ中断期間中に当時のことを思い出す機会があって、これを我々らのサッカーを完成させるための、『個の戦術』を理解する仕組みに応用できないか、と考えて、個人戦術の質を上げるための専門コーチをつけることにした。

 選手はパーソナルコーチの具体的なアドバイスと映像を教材に『予習』をしてトレーニングや試合に臨む。トレーニングや試合が終われば『復習』。さらに『宿題』までこなして次のトレーニングや試合に備える、というサイクルが作れたらと考えた。

 トライアル&エラーを繰り返すことで、我々が描きたいサッカーの絵を完成形に近づける。パーソナルコーチのアドバイスと、チームの目指す方向性が違うと成り立たない話だけどね。今我々らの取り組みが成り立っているのは、『チームとして描きたいサッカーの絵』をコーチやスタッフ全員がしっかり理解しているから」

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