元バルセロナの重鎮に絶賛された
「美しく勝つ」永井秀樹のヴェルディ (3ページ目)
では、永井の取り組みについて選手はどう捉えているのか。攻守にわたり永井スタイルを支えるキーマンのひとり、新キャプテンに指名された佐藤優平に聞いてみた。
パーソナル・コーチングで使用する映像資料。こうして選手に課題を可視化し具体的に伝えている photo by Aizu Yasunari「永井さんのサッカーというのは『美しく勝つ』というところですが、少し泥臭さが必要だということも永井さんは言っています。どこでシュートを打つとか、どこまで押し込めているのか、そういうところは常に自分たちの頭の中になければいけないのだと思います。
新加入の選手も含め少し時間はかかったものの、相手を翻弄して押し込む作業がどの対戦相手にもできるようになってきましたが、ペナルティエリアでのアイデアは、ある程度自分たちの個の部分にかかっています。
押し込んだあとの個のアイデアは、監督である永井さんやコーチングスタッフのアイデアを上回っていく必要があります。そのアイデアがチームの形とはまた違う色を出していかないと、相手が少し対策するとバレてしまいます。
あとは、本当に個の部分と言いますか、永井さんはよく『個的優位』という言葉を使いますが、本当に個的優位が大事だと思います」
永井のアイデアやチームの形とは違う色を出す――。
それができるようになるためには、まずは「型」を習得する必要がある。永井の言うところの「型」とは、枠にはめる型ではなく、「共通認識」という意味であり、佐藤はそれを理解していた。全員攻撃でどの位置からでも得点できるサッカーを体験したことで、選手たちは昨シーズンにはなかった自信を得たに違いない。
7月29日の対アルビレックス新潟戦――。
勝利目前で同点に追いつかれて引き分けに終わった。しかし、アルビレックス新潟のアルベルト監督(FCバルセロナで育成部門のトップとして長年在籍しクラブの根幹を築き上げた人物のひとり)からは、「こういうゲームが理想的。(ヴェルディのサッカーは)日本サッカーの目指すべき姿を示している」と称賛された。
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敵将の賞賛は選手だけでなく、監督である永井にとっても、これまで積み上げてきたことの方向性は決して間違っていなかったと自信の持てる出来事だったのではないか。
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