清水のクラモフスキー監督が語る日本。「W杯で優勝してもおかしくない」 (2ページ目)

  • 井川洋一●取材・構成 text by Igawa Yoichi
  • 小倉直樹●撮影 photo by Ogura Naoki

──あの頃のレッドスターには、パンチェフ、シニシャ・ミハイロビッチ、ロベルト・プロシネツキ、ヴラディミル・ユーゴビッチなど、優れたタレントが揃っていました。そして、多くの試合で複数得点していたように、攻撃に特長を持ったチームでした。

「観ていてすごく面白いチームだった。特大の才能に恵まれた選手たちが揃ったチームは、欧州中の強豪を次々に倒し、大陸の頂点に立った。しかもメンバーはほぼ全員、ユーゴスラビア人だった。あの偉業は、今でも鮮明に覚えているよ。

 ただし、フットボールは進化し続けている。当時のレッドスターは観ていて楽しいチームだったけれど、それは主に個々の輝きによるものだったと思う。一方、現在のフットボールでは、個人能力だけで成功を収めることはできない。

 もちろん私も、欧州のトップレベルのフットボールを観ている。近年では、バルセロナやバイエルン、リバプール、そしてマンチェスター・シティらが、フットボールを大きく進化させてきた。そうしたチームのよい部分を自分の指導に取り入れることもある。けれども、アンジェと私が率いたマリノスは、どこかを真似たわけではない。彼が長年培ってきた哲学とメソッドに、ほかのモダンフットボールチームのよい部分を組み合わせてできたチームと言える」

──横浜FMはマンチェスター・シティの姉妹クラブですが、昨シーズンのとくに終盤戦は前線からの激しいプレスが冴え渡り、どちらかというとリバプールに近い印象を受けました。

「そうかもしれないけど、私はほかとは比較しない。もちろん、いい意味でね。世界中のフットボールを見ているが、このマリノスと似たチームはどこにもないと思う。アンジェ・ポステコグルーのオリジナルだ。ずいぶん前から、彼はこのスタイルを掲げ、信じ、貫いてきた。そして豪州でも、クラブと代表で成功を収めてきた。今のマリノスのフットボールにも、彼の哲学が反映されている。コーチだった私やほかのスタッフ、そして選手たちは、それを心から信じ切っていた」

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