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神戸が初タイトル獲得。実を結び始めた大型補強が生む好循環 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 木鋪虎雄●撮影 photo by Kishiku Torao

 しかし、神戸はここでひるむどころか、夏の移籍市場でさらなる補強を敢行。今季J1王者の横浜F・マリノスで控えに甘んじていたGK飯倉大樹、ベルギー代表のトーマス・フェルマーレン、今季の大分トリニータ旋風の立役者である藤本、元・日本代表にしてドイツでの経験豊富な酒井と、主力級を次々に獲得すると、成績も徐々に上向いた。

 それは、補強によって選手個々の能力が高くなったから、というだけではない。能力の高い新戦力が加わることで、それまで曖昧だったチーム戦術が確立されたことも大きかった。飯倉は「残留争いをしながらも、自分たちのスタイルを組み立てられてきた」と言い、戦力補強の効果をこう語る。

「トーマスと高徳が入ったことで左サイドの守備が安定し、それが(チーム全体に)相乗効果を生んだ。最近の守備が安定したのは、(後ろの守備が強くなったことで、前線から)ファーストディフェンダーがはっきり行けるようになったから」

 今季開幕当初からの主力であるDF大﨑玲央も、「当たり前のことを一からやったことが、最後に(天皇杯優勝という)結果につながった」と振り返る。DFながら、天皇杯決勝では攻撃でも出色の働きを見せた大﨑が、あれほど大胆に攻撃に加われるのは、チームとしての戦い方がピッチ上の選手全員に浸透している証だろう。

 この優勝で、神戸は来季のAFCチャンピオンズリーグ出場も決定。Jリーグレベルでは異次元と評してもいいほどの大型補強を続ける神戸が、次なる戦いに打って出る。神戸が世界規模でさらなる注目を集めることは間違いない。

 今季J1での神戸は、最後は3連勝でフィニッシュし、最終順位も8位まで上げたとはいえ、所詮は8位。開幕前の注目度の高さを考えれば、それにふさわしい成績とは言い難かった。

 しかし、試合を重ねるごとにチームがチームとして機能するようになった結果、最後の一冠を獲得したことは、今季の神戸に対する印象をずいぶんと違ったものにしたはずだ。

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