高校サッカー史に残る野洲の優勝。主将が語る現在の高校生との違い (4ページ目)

  • 鈴木智之●取材・文 text by Suzuki Tomoyuki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

「大学時代を振り返ると、自分で選んだ道なので、その環境で100%頑張ればよかったんです。監督の考えを理解して、チームのためにプレーする気持ちを持っていれば、変わることができたのかもしれません。でも、当時の自分はこの(野洲の)プレースタイルで全国優勝したので、変に自信があったんですよね」

金本竜市は現在、野洲高サッカー部のコーチを務めている photo by Sportiva金本竜市は現在、野洲高サッカー部のコーチを務めている photo by Sportiva 結局、関西選抜やJクラブから練習参加の声がかかりながらも、不完全燃焼で大学サッカーは終了。「おそらく当時の自分では、プロになってもすぐに潰れていたでしょうね」と振り返る。

 選手としては悔いの残る大学時代だったが、指導者として見ると、違った意味を持ってくる。

「高校生を教える立場になってみると、すごくいい経験をしたと思います。サッカーに取り組む姿勢や考え方、自分はこうなりたいという目標を持つこと。そのための手段や方法を考えることの大切さは、今になってわかります。それは選手たちにも伝えていきたいですね」

 全国優勝した経験、個性派揃いの野洲高メンバーをまとめた人間性。そして、サッカーに対する少しの後悔。指導者としての素地は、十分に備えていると言えるだろう。

 2019年11月3日。全国高校サッカー選手権滋賀県予選・準々決勝で、野洲高は草津東高に0-1で敗れ、全国行きを逃した。

 試合後、金本は観戦に来ていた青木と言葉をかわした。野洲高の優勝時のような喧騒はない。青木の存在に気づく観客もいない。それでも、これから何かが始まりそうな予感は充満していた。試合中に降り出した雨は、すっかりあがっていた。

(つづく)

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