鹿島を追い詰めたV・ファーレン長崎。来季へ価値ある天皇杯ベスト4 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 それと同時に、「鹿島はリーグ戦終盤、3バック(のチーム)に手を焼いていた」と、手倉森監督。リーグ戦での主戦システムだった4-4-2から、3-4-3(4列表記なら3-4-2-1)へと、フォーメーションにも変更を加えた。

 4-4-2の鹿島に対し、意図的にミスマッチを作り出すシステム変更と、その戦術に適した選手選び。長崎の鹿島対策は、見事に功を奏した。

 長崎は3-「4」-3の「4」の両サイド(ウイングバック)に起点を作り、そこから斜めに打ち込むクサビのパスを合図に、攻撃をスピードアップさせた。左ウイングバックのDF亀川諒史が語る。

「(長崎の)ウイングバックに対し、(鹿島の)サイドバックとサイドハーフのどっちが(マークに)出るかで戸惑っていて、そこが空いた。分析どおりだった」

 前半37分に長崎が返した1点目のゴール――右サイドでのつなぎからバイタルエリアでボールを受けたFW吉岡雅和が、DFラインの裏へ飛び出した右ウイングバックのMF米田隼也へスルーパスを通した――は、とりわけ鮮やかに、長崎の狙いがハマったものである。

 長崎が1点ビハインドで迎えた後半は、「鹿島が思ったより引いてくれた」と、3バックの中央を務めたDF角田誠。角田はあたかもボランチのごとく、積極的に高い位置まで進出し、攻撃に加わることで厚みを作り出した。長崎は後半28分、CKから先に3点目を失うも、直後の後半31分にMF澤田崇のゴールで再び1点差に。その後も連続攻撃を仕掛け、何度も鹿島に冷や汗をかかせた。

 結果的に、長崎は常にリードを許し、一度も追いつくことなく、試合は終わった。だが、鹿島に悠々と逃げ切られたわけではない。亀川は、「練習で準備したことを90分間出せたのではないか。相手も焦っているように見えたし、『もしかしたら』というところまでは来ていた」と話していたが、その言葉も強がりには聞こえなかった。

 長崎の狙いはある程度までハマっていた。それだけに、「3失点はちょっと取られ過ぎた」(手倉森監督)。不運もあったとはいえ、序盤の2失点があまりにもったいなかった。

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