鹿島を追い詰めたV・ファーレン長崎。来季へ価値ある天皇杯ベスト4 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Kyodo News

 とはいえ、試合後、長崎の選手たちの表情に暗さはなかった。むしろ、そこに色濃く表われていたのは、"やれることはやった"という充実感である。角田が語る。

「(鹿島が相手で)僕らのほうが、気持ちが入っていたのは間違いない。それが天皇杯の醍醐味。鹿島が相手だからできたとは思うが、これだけのメンタルで来年のリーグ戦もできればいい。負けて楽しいというのも変だが、みんな楽しかったと思う」

 36歳のベテランDFの言葉に引っ張られるように、ボランチのMF磯村亮太もまた、「(アウェーながら多くの長崎サポーターも駆けつけ)こんなすばらしい雰囲気でやれるのは幸せ。やっていて楽しかった」と振り返った。

 もちろん、J2クラブにとって、シーズン最大の目標はJ1昇格。それが達成されてこそ、充実のシーズンだったと胸を張れる。手倉森監督は、「崩されたわけではないが、それでも3点取るのが20冠を取っている鹿島。我々が新興勢力となっていくためには、そういう鹿島を倒さなければいけない。その可能性を示す戦いはできたのかなと思う。選手たちが来季への可能性は示してくれた」と語るが、天皇杯での勢いが、そのまま来季J2に続く保証はどこにもない。

 しかしながら、長崎が天皇杯で手にしたものは、単にベスト4進出という結果だけではなかったようだ。角田が語る。

「久しぶりに(J1クラブと対戦した)この雰囲気が楽しかったし、ここに戻りたいという気持ちになった」

 長崎が1年でのJ1復帰を目指した今季、ほとんど昇格争いに加わることなく、J2で12位に沈んだ事実は動かしようがない。だが、したたかに鹿島に勝ち切られたこの試合が、選手たちの心に火をつけるきっかけとなったなら、シーズンの締めくくりとしては決して悪くなかったはずである。

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