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鳥栖、因縁の残留争いへ。
「トーレス・フィーバー」とは何だったのか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 つまり、鳥栖はチームマネジメントの出発点で失敗していたのだ。クロアチア人DFニノ・ガロヴィッチ(古巣のディナモ・ミンスクに期限付き移籍)のように、多くの新戦力も満足に稼働していない。ポジション別に見ても、豊田、トーレス、金崎夢生、趙東建、ビクトル・イバルボ(V・ファーレン長崎に期限付き移籍)などストライカーばかり集める一方、パサーやセンターバックは極端に乏しい陣容だ。昨今の補強のゆがみの積み重ねで、編成バランスは著しく悪かった。

 その結果は、開幕10試合で1勝1分け8敗。1得点16失点と、内容も惨憺たるものだった。ボールを持たされることはあっても、少しも相手に怖さを与えていない。結局、パスをひっかけられ、脆弱なディフェンスを打ち抜かれた。

 頼みのトーレスも10試合無得点。見ていて気の毒になるほどのありさまだった。

「前から守備はしなくていい。ゴールのパワーを貯めておけ」

 カレーラス監督からそんなお墨付きをもらっていたトーレスだが、すでにトップフォームではなく、シュートは明後日の方向に飛んでいくことがままあった。全盛期のトーレスでは考えられないような外し方だった。腰がぐらぐらし、フォームが崩れてしまう。上半身は筋力をつけており、ヘディングシュートなどは圧巻の威力を見せたものの、下半身は膝を中心にした故障で、思いどおりにはならない状態だった。

 あまりの体たらくに、クラブはようやくカレーラスのクビを飛ばした。

 この苦境に、金明輝監督が"再登板"することになった。昨シーズン、フィッカデンティの後任として残り5試合の時点で監督に就任すると、3勝2分けという成績で、奇跡的にチームをJ1に残留させた。選手の信望も厚かった。

 そして今シーズンも就任するや、失意に沈んでいたチームの成績を、9勝4分け8敗と勝率五分にまで戻している。短期間のうちにプレーの仕組みを整え、公平に選手を扱った。トーレスでさえ、特別扱いをしなかった。豊田なら高さを生かすなど、シンプルに選手の特長を生かす編成を相手に応じて決定。興味深いのは、金監督体制でトーレスのシーズン初得点が生まれている点だろう。

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