昨季の王者、川崎のボール支配率が低下した要因はサイドにあり

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 J1リーグ第29節。勝ち点47で並ぶサンフレッチェ広島とホーム等々力で対戦した川崎フロンターレは、後半39分、マギーニョの決勝ゴールで勝利を飾り、勝ち点を50に伸ばした。しかし、上位3チームがすべて勝利したため、結果的にその差は詰まらずに終わった(鹿島アントラーズ/勝ち点57、FC東京/57、横浜F・マリノス/56)。残り4試合。川崎がこの3チームをまとめて抜き去ることは難しい状況だ。3連覇は絶望的な状況になったと言えるだろう。

 広島戦の話をすれば、勝つには勝ったが、サッカーは低調だった。

サンフレッチェ広島戦で決勝ゴールを決めたマギーニョ(川崎フロンターレ)サンフレッチェ広島戦で決勝ゴールを決めたマギーニョ(川崎フロンターレ) 滑り出しはよかった。20分、田中碧のミドルシュートで先制したあたりまでは、試合を優勢に進めることができた。だが、時間の経過とともに広島にペースを握られることになった。際どいチャンスの数でも断然上回られた。そして後半36分、小柄なマギーニョがヘディングを後方に逸らすと、それを交代で入ったFWレアンドロ・ペレイラに拾われ、同点ゴールを許してしまう。

 このまま終われば、首位鹿島とは9ポイント差、3位横浜との差も8ポイント差に広がる。ほぼ満杯に埋まったスタンドには、広島サポの歓声ばかりが響き渡った。

 ボール支配率は40対60。試合を優勢に進める広島に、逆転ゴールが生まれても不思議はない流れの中で、冒頭で述べたマギーニョの決勝弾は生まれた。

 試合後、テレビのヒーローインタビューにもそのマギーニョが呼ばれていた。失点のシーンに関与していたので、自らのミスを自らの手で帳消しにしたことになる。

 マギーニョは今季、川崎にやってきた右サイドバック(SB)だ。シーズン開幕を告げるゼロックススーパー杯(対浦和レッズ)、そしてリーグ戦初戦のFC東京戦こそ先発を飾ったが、その後は鳴かず飛ばず。今季の出場機会は前節まで、わずか6試合(先発5回、交代出場1回、計388分)にとどまっていた。

 その後、右SBは今季広島から獲得した馬渡和彰が務めることになったが、この選手も結局、不動の選手にはならなかった。これまで出場機会は13試合(先発10回、交代出場3回、計977分)に終わっている。本来、左SBの車屋紳太郎や登里享平を右SBとして使うことで補ってきた。

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