2019.10.31

小野伸二は沖縄でジーコになるか。
FC琉球会長が語るビッグな近未来

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

「最初は運営資金が足りないので協力してほしい、ということでした。『1000万円程度かな』と想像していたのですが、決算書を見せていただいたら約1億2000万円も足りず、来月とか1週間後には、そのお金がないと選手に給料を払えない、クラブもなくなる、という状況でした。

FC琉球で経営手腕を発揮している倉林啓士郎会長 大きなお金ですし、自分も沖縄出身でもないので、どうしようか本当に迷いましたが、3年間支えてきたクラブがなくなる事態は防げるならば防ぎたい。日本のサッカーにおいても、沖縄という土地にリーグのクラブがあることは重要ですし、それをなくしてはいけないと思い、出資を決めました」

 地元沖縄で社長に就任してくれそうな人物を探してみたものの、見つからない。誰も引き受けないならば自分やるしかないと腹をくくり、倉林は無報酬でFC琉球社長に就任した。現在は経営力強化を図るため2人代表制を採用し、倉林は取締役会長に就任。現場のオペレーションは三上昴新代表取締役社長と、廣﨑圭・新代表取締役副社長兼スポーツダイレクターに任せ、倉林自身はJ1規格スタジアムの建設推進や、アジア展開(2019年7月、台湾サッカー協会と包括的パートナーシップ協定締結)などを中心に進めている。

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 小野のデビュー戦となった8月17日の横浜FC戦。ホームのタピック県総ひやごんスタジアム(通称タピスタ)には、観客動員の最高記録を1.5倍も更新する、1万2019人が集まった。

 FC琉球の選手、スタッフ、すべての関係者にとってそれは、今から次のステージが始まることを実感させ、近い将来、FC琉球がJ1の舞台で戦う姿を想像させるに十分な景色だった。

「ほんとに夢のような景色でした。天気もよくて、初めて満員のスタジアムというのを観ることができた。観客の方にしっかりと来ていただいて、それが収益にもつながり、クラブをさらに強くできる。最初は『本当にほかのJ1やJ2のクラブのように、入場料収入を稼げるようになるのか』と考えたりもしました。それが、一昨年、去年、今年とステップアップして、『沖縄』というおそらくは日本で一番アクセスの悪いスタジアムでも満員にできた。それはものすごく大きな成功体験でしたし、自信にもなりました」