ヴェルディ監督への想い。
永井秀樹はユースで「合唱」を練習していた

  • 会津泰成●文・撮影 text&photo by Aizu Yasunari

永井秀樹 ヴェルディ再建への道
トップチーム監督編(2)

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ヴェルディ再建のためにトップチームの指揮を執る永井秀樹ヴェルディ再建のためにトップチームの指揮を執る永井秀樹 トップチームでもぶれない信念
「ヴェルディらしいサッカー」

 羽生英之社長の想いを受けて、永井秀樹は7月17日からトップチームの監督に就任した。その初日、永井はどう過ごしたのか、就任して1カ月。そのときのことを聞いてみた。

 トップチームに就任した7月17日、クラブハウスに向かう車のなかで永井は、槇原敬之の『世界に一つだけの花』オーケストラヴァージョンを繰り返し聴いていたという。その曲は、クラブユース選手権で優勝して日本一になった時、ユースの教え子たちに歌わせようと、練習させていた曲だった。

「ある日のミーティングで、選手たちに『俺たちが目指すのは、全員で共有し、共鳴してプレーして、観る人たちを感動させられるサッカーだ。『じゃあサッカーやスポーツ以外で、みんなで共有、共鳴して人々に感動を与えるようなエンターテインメントは何があるか』と質問した時、ある選手が『合唱やオーケストラ』と答えた。『その通りだ。俺たちは夏のクラブユースで優勝、日本一になるために心をひとつに合わせたい。そのために明日から合唱の練習を始めるぞ』と話をしたのが最初だった。

『応援してくれた両親や友達、サポーターに感謝の気持ちを込めて、クラブユースで優勝したら観客席に向かって合唱し、感謝の気持ちを伝えよう』と話した。それから週に1度、合唱の練習を始めた。

 普通だったら、『俺たち、サッカー選手なんですけど......』と思う選手がいてもおかしくないと思う。でも、全員一生懸命、大きな声を出して練習してくれていた。本当、いい子たちばかりだった」

 そんな思い出が詰まった曲を聴きながら、永井は「あえて何も考えないようにしていた」と言う。

 クラブハウスに到着すると、スタッフミーティングののち、まずはトップチームの選手が待つミーティングルームへと向かった。

 そして、選手たちの前でこう語りかけた。

「自分のやろうとしていることは、いたってシンプル。いいサッカーをして勝つ。いいサッカーとはヴェルディらしいサッカー。ヴェルディのサッカーをして勝つ。それを、やるかやらないか。

 できない言い訳をするのは簡単。でも、この場所にいる全員が同じ目標に向かい、このクラブのためにプレーできるか。『もっとできる』『もっといいサッカーをしよう』『あと一歩、前に出よう』。そういう気持ちを持てば、必ず勝利をつかめる。ここにいる仲間を信じて、針が振り切れるまで戦い続けよう」

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