サンフレッチェは若手台頭&大黒柱復活。広島のこれからが面白い (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 その意思が結実したのは、61分のこと。左サイドを連係で切り崩すと、この日、スーパーな活躍を示し続けた柏好文が角度のない位置から叩き込み、先制ゴールをマーク。その後は相手の猛攻を、身体を張った守備でしのぎ、敵地でこれ以上ない最高の結果を手に入れた。

「今日のサッカーは、我々の目指すサッカーの自信になるものだった」

 指揮官は、やや興奮した面持ちで試合を振り返った。

 今季の広島は、昨季終盤の失速の反省を踏まえ、3−4−2−1の布陣に変更してポゼッションを重視したサッカーを標榜。だが、実際のところは、守備的な戦いから脱却できないでいた。開幕から7戦無敗と結果を出したものの、その後にまさかの5連敗。昨季と同じような状況に陥っていた。

 そこで、指揮官は決断する。第14節の北海道コンサドーレ札幌戦で敗れると、さらなるポゼッションスタイルへと、あらためて舵を切ったのだ。

 その決断は奏功する。第15節の湘南ベルマーレ戦に2−0と快勝すると、その後はひとつの黒星も喫していない。まだまだその精度には改善の余地があるものの、あくまで能動的な戦いを演じるなかで、着実に進化の兆しを見せている。

 そのなかで、若手の台頭も促した。

 開幕からスタメンの座を勝ち取った新守護神の大迫敬介だけでなく、レンタル復帰2年目の川辺駿は中心選手として中盤に君臨。今季途中よりシャドーに抜擢された森島司は鋭いドリブルでパスサッカーにアクセントを加え、質の高いプレースキッカーとしてもゴールに絡む仕事を連発する。

 この日、もうひとつのシャドーで起用された東俊希も含め、彼らはいずれも20歳前後の選手たちである。結果を出しながら、世代交代も推し進めていく――。今の広島には、理想的な状況が生み出されているのだ。

 なかでも目を引いたのは、3バックの中央を務める荒木隼人の存在感だ。大卒1年目の大型CBは、とりわけ押し込まれた終盤にその能力の高さを示した。アバウトに放り込まれてくるクロスをことごとく跳ね返し、逃げ切りに大きく貢献した。

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