注目はリスタート。サッカーの新ルール適用開始の狙いはどこにある? (3ページ目)

  • 清水英斗●取材・文 text by Shimizu Hideto
  • photo by Getty Images

 このようにさまざまな変化が期待される新ルールだが、そもそもなぜ、今回の改正が行なわれたのか。その理由をご存知だろうか。

 小川審判委員長によれば、2017年にIFABが発表した『PLAY FAIR!』(公平・公正にプレー!)戦略を基に、次の3つがルール改正の焦点になったそうだ。

・選手の振る舞い(行為、行動)の向上と「リスペクト」の向上
・より長いプレーイングタイムの確保
・「公平、公正さ」と「魅力度」をさらに向上

 前述した、ゴールキックをペナルティーエリア内で受けられないかつてのルールは、GKがバックパスをキャッチすることが可能だった時代に、DFとGKの間での時間稼ぎを防ぐため、エリア内でパスを受けることを禁じた背景があったとされる。あるいは、エリア内に過度に両チームの選手がなだれ込んで深刻なケガを負う状況を避けるため、エリア内でゴールキックを受けることを禁じた、という説もある。

 いずれにせよ、このルールは、バックパス自体を禁じた1992年のルール改正により、存在価値が薄れていた。逆にエリア内で受けたらゴールキックのやり直しというルールを転用し、勝っているチームが時間稼ぎをしたり、プレスを受けそうな状況の回避のためにサッとエリア内に入って受け、やり直しにする、といった様子が徐々に見られるようになった。

 公正さに欠ける行為、時間の浪費は、サッカーの魅力を低減させる。これらの状況の改善を促すため、ルール改正の対象となったわけだ。

 また、そのほかの改正を見ても、交代で外に出る選手はメインスタンド中央ではなく、最も近いラインから出なければならないという項目があるが、これも同じこと。のろのろと逆サイドまで歩いて交代するという、時間の浪費をさせないためだ。今回のルール改正は、プレーイングタイムを増やし、公平さ、公正さ、そしてサッカーの魅力を高める目的で行なわれている。

 こうしたルール改正の意図を、西川はしっかりと感じたようだ。

「やっぱり試合を見に来てくれる人は、選手がプレーしている姿を見たいと思って、来てくれていると思います。止まっている時間というのは、どうしても退屈するし、面白くないはず。それは選手も一緒で、できるだけプレーしたい。その気持ちが良いプレーにつながって、Jリーグのレベルもどんどん上がって行くと思うし、ルール改正にはポジティブなところが多いと思っています」

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る