移籍組の犬飼智也は実感。鹿島は「型」はなくても「コミュ力」がある (3ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 渡部 伸●写真 photo by watanabe shin

――ある種の開き直りというか、背伸びをし過ぎるのではなく、「自分に今できることをしっかりとやるだけだ」というような気持ちになっていくと。

「毎週末試合に出続けるというふうになれば、試合に挑む気持ちも変わってきます。でも、やっぱり、開き直るというのはプロには必要だと思います。開き直るというか、現実的に自分が今できることを見極めて、自分自身でミスに対して向き合って、それを解決していく姿勢が大事なんだと思っています」

――たとえば、試合には勝ったとしても、ご自身のプレーに満足できない、という毎日だったと思うのですが、チームに加入した直後、そういう葛藤を癒してくれる存在もまた力になりますよね?

「そうですね。よくないプレーに対してチームメイトとも話します。鹿島はミスに対して選手個人に引きずらせないチームなんですよ。誰がどうだった、ダメだったというんじゃなくて、改善するための話をみんなでします。普通にミスをイジってもきますし(笑)。本当にいいクラブだなと思います」

――ミスをしてしまった人間にとっては、イジられたほうが、気持ちが楽になることは多いでしょうね。鹿島には、ピッチ上で選手たちが試合に応じた修正を施す力があると思うのですが。同時に戦術という型に嵌(は)めた戦い方をしていない印象があります。

「そうですね。そういう形というのは、もしかしたらJリーグの中ではもっとも持っていないかもしれません。この鹿島というクラブは、自分たちがうまくいかないときに、戦術のせいにすることはないと思います。うまくいかなかったら、やり方がどうなのかという部分はありますけど、全体というよりも、1プレーとか、前半嵌(はま)らないときに、『どうするのか』と、細かい話をピッチのなかでする回数が、断然多いと思いますね。もちろん戦前のミーティングで監督からの指示はあるし、要所要所で監督が教えてもくれます。でも、自然と選手たちから声が出るので。やっぱりやっている本人たちが一番わかっているから、選手間で話す回数は多くなりました」

――ただ「話す」だけじゃなくて、コミュニケーションスキルの高さも求められるんじゃないですか? 特にCBというポジションは。

「やっぱり、CBはそこが大事だし、自分から発信することの重要性は意識しています。清水や松本時代にもそこはやっていたとは思いますけど、経験を積んで、言えることやゲームの見方も変わってきているし、そのうえで鹿島でプレーしていることで、コミュニケーションスキルは、自然と伸びると思います。勝つためにやらなくちゃいけないし、しゃべることが大事だと改めて感じるので」

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