トーレスも業を煮やして中盤へ。鳥栖の状況は昨季以上に深刻だ (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 金監督が振り返ったように、鳥栖としてはショートパスをつなぎながら、全体を押し上げ、前線の連係で崩そうとする狙いが見てとれた。しかし、前に人数をかける分、失った際には後方の人数が不足する。そこで求められるのはネガティブトランジションの速さだが、先んじてスペースに飛び出すのは鹿島のほうであり、鳥栖の守備陣は枚数の少ない状況で対応せざるを得なくなっていた。

 35分に失った2失点目も、レアンドロにサイドのスペースを突かれ、鳥栖は後ろ向きに追いかける対応となっていた。また、そこからのクロスを白崎凌兵に決められた場面でも、DFが先に身体を入れていたにもかかわらず、白崎に強引に押し込まれている。球際の攻防という部分でも、やはり鳥栖は相手に上回られてしまっていたのだ。

 1点を追いかける後半は、ほとんどチャンスを作れなかった。51分の豊田陽平のヘディングシュートの場面が、唯一の決定機だっただろう。

 端的に言えば、鳥栖のサッカーには迫力が不足する。丁寧にパスをつなごうとする意図は見てとれるが、なかなかスピードが上がらず、リトリートした相手を崩すことができない。アタッキングサードでの連動性もスムーズさに欠け、受け手と出し手の意図が合わず、パスがずれてしまう場面も散見された。

 前線には金崎、豊田と強力なストライカーがいる。金崎には推進力とガムシャラにゴールに向かう闘争心、豊田には高さとパワーが備わる。両者のプレーの特徴は、まぎれもなくチームの武器である。しかし、淡々とパスを回すだけで、その能力を生かし切れていないのだ。

「つなぐ時と(長いボールを)蹴る時のバランスがよくないところはあります」

 豊田は現状をそう分析している。

「そこは僕も言ってはいるんですけど、なかなか難しい。割り切って蹴ればいいところもありますし、割り切るだけでは次につながっていかない部分もある。どちらかに偏るのではなく、バランスよくやっていく必要がある」

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