2019.07.09

神戸の新監督は「いまある食材で最高の料理を作る」ことで勝利を目指す

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Getty Images

福田正博 フットボール原論

■ヴィッセル神戸はトルステン・フィンク新監督就任後、新体制初陣の首位FC東京との戦いを白星で飾ったあと、大分トリニータと引き分け、名古屋グランパスとの打ち合いを制した。第18節で清水エスパルスに競り負けたものの、4試合で勝ち点7を積み上げている。その神戸の新体制について、元日本代表の福田正博氏はどのように分析しているのか?

新たに神戸の指揮官となったフィンク監督 神戸は、ドイツ人のフィンク監督を招いたことで、「スタイルがスペインからドイツに変わった」「バルセロナ化が暗礁に乗り上げた」などという声もあるが、私は神戸が”自由”を得たと感じている。

 昨季はアンドレス・イニエスタ、今季はダビド・ビジャという元バルセロナ&元スペイン代表の名手を獲得し、バルセロナのようなポゼッションサッカーを目指しながらチーム強化に乗り出している神戸。しかし、クラブ首脳もサポーターも「バルサ化」の言葉にとらわれすぎていたように思う。

 今季序盤戦の神戸は、極力ボールをつなぐことにこだわった。その結果、サッカーそのものが窮屈になっていた印象だ。サッカーは相手のあるスポーツであり、自分たちがどれだけポゼッションを高めたいと思っても、相手の技量や運動量が自分たちを上回っていれば、それを実現するのは困難になる。

 相手の出方に応じて戦い方を変えることも重要になるが、神戸はそれができていなかったと言える。バルサほどの完成度にはなっていないポゼッションをベースにした戦い方だけで勝てるほど、Jリーグのレベルは低くはないし、バルサのようなハイレベルのポゼッションができるだけの戦力が、神戸にまだそろっていないとも言える。

 本家のバルセロナであっても、相手の戦い方に応じてスタイルを変える局面はある。実際、エルネスト・バルベルデ監督はカウンターを用いることもあり、柔軟だ。また、過去にバルサを率いていたジョゼップ・グアルディオラ監督(現マンチェスター・シティ)にしても、バイエルン時代には対戦相手がドルトムントのときは、縦へのロングボールでプレスを回避する戦い方を選ぶこともあった。当時のドルトムントはユルゲン・クロップ監督(現リバプール)のもと前線からのプレスとショートカウンターで結果を残していたが、その相手に対してDFラインからパスをつないでいくのはリスクがあると判断したのだ。

 つまり、スタイルや戦術は、あくまでも「相手を上回り、勝つ確率を高めるため」の手段のひとつで、目的ではないということだ。

 神戸の場合、バルセロナのような高いレベルの連係・連動を完成させること、ポゼッションを高めていくことが目的になってしまい、その形ばかりを追い求めたために失点が増えていた側面があるのではないか。そこをフィンク監督は整理してシンプルにした。勝つために、現有戦力で最大の強みであるイニエスタとビジャが最大限に輝く形を模索している。