世界でもレアな存在、車屋紳太郎。左利きの右サイドバックが面白い (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by AFLO

 そこに現れたのが車屋になる。森保一監督とは相性が悪いのか、日本代表にはあまり選ばれていないが、エウシーニョ同様、Jリーグベスト11に2シーズン連続(2017年と2018年)で輝いた、日本を代表する実力派の左SBである。

 右SBとしてはどうなのか。前半29分、大島からサイドチェンジのパスを受けると、車屋は余裕のアクションを見せた。磐田のウイングバック(WB)、松本昌也の対応が遅れたこともあって、そのマークを外すのに苦労は要らなかった。ボールを右から左に懐広く持ち代えると、自慢の左足から狙いすますようにセンタリングを送り込んだ。

 小林悠が、これをジャンプ一番ヘッドで叩き込み、川崎は待望の先制ゴールをマークした。ヘディングも見事だったが、ヘディングしやすいコントロールの利いた柔らかな弾道なしには奪えなかった、まさにアシスト者名を明記したくなるゴールだった。

 試合はこれを境に川崎ペースになっていった。結果は1-3。磐田は後半のロスタイムに1点返したが焼け石に水だった。これでサガン鳥栖と入れ替わり18位に転落。名波浩監督は試合後、その責任を取り辞任を表明した。

 名波は言わずと知れた元日本代表のMFだ。車屋と同様、「9人に1人の割合で存在する」とされる左利きの選手だが、同じ左利きでも車屋とはタイプが違う。相撲や柔道などの格闘技用語で言うところの半身の体勢がキツかった名波に対し、車屋はそれほどでもない。身のこなしは右利きのSBとパッと見、そう変わらない。

 右足をほとんど使わなかった名波に対し、その使用を苦にしないように見える車屋。この試合でも、彼は右足でクロスボールを何本か送り込んでいた。

 左利きと言えば、かつては名波派が多数を占めた。かつて磐田などで左SBとして活躍した元日本代表の服部年宏や、このほど磐田から横浜FCへの移籍話が出ている中村俊輔も名波派だ。

 かつてはそれを誇示するように、左足1本でプレーするのが一般的な姿だった。世界的に見ても、である。だが、いま名波派は古典的スタイルに属する。半身のスタイルを取る選手は激減。パッと見、左利きなのか右利きなのかわかりにくい、右足でも精度の高いキックを蹴ることができる選手が増えている。

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