ACL「Jリーグ対決」は鹿島に軍配。昨年の教訓を生かして広島を零封

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 決してエキサイティングな試合ではなく、創造性にあふれる試合でもなかった。綺麗とは言えない得点シーンも含め、見るべき点は少なかっただろう。スコアこそ動いたとはいえ、ただ淡々と、90分という時間をやり過ごすかのような展開だった。これが映画であれば、エンドロールを待たずして、席を立っていたかもしれない。

鹿島の攻撃陣を束ねて先制点のチャンスも作った土居聖真鹿島の攻撃陣を束ねて先制点のチャンスも作った土居聖真 しかし、両者の心理状態を読み解けば、こうした試合になるのは理解できる。2試合をトータルで考えるノックアウト方式の1stレグにありがちな、いわば静かな戦いに終始した。

 鹿島アントラーズとサンフレッチェ広島のJリーグ対決となった、ACLラウンド16の第1戦。"サイレントゲーム"のシナリオを描いたのは、ホームで戦った前年王者のほうだった。

 立ち上がりこそ一進一退の攻防が続いたが、次第に広島がボールを握る展開となっていく。とりわけ起点となったのは左サイドで、左ウイングバック(WB)の柏好文だけでなく、1トップのドウグラス・ヴィエイラも同サイドに流れて、ボールを引き出していった。

 もっとも、「今日はまずはゼロに抑えることが第一優先だった」(永木亮太)という鹿島は、ボール支配こそ譲りながらも、最後の場面をやらせない集中した守備を保つ。すると24分、ハーフウェイライン付近でボールを拾った土居聖真がそのまま左サイドを持ち上がり、中央へクロスを供給。DFに当たったボールの落下地点にいち早く走り込んだセルジーニョが頭で押し込んで、したたかに先制ゴールを奪取した。

 こうなれば、流れは完全に鹿島のものになる。相手にアウェーゴールを与えない守備組織をがっちりと築き、隙を見てカウンターを繰り出せばいい。決して無理をせず、かといって受け身だけにならず、時計の針を着実に進めていった。

 後半も広島がボールを持ち、鹿島が守るという構図は変わらなかった。それでも鹿島には、まるで焦りが感じられない。後方でのパス回しには見向きもせず、入ってきたボールには鋭く対応。ツボを得た守備で、広島にチャンスらしいチャンスをほとんど作らせなかった。

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