ACL「Jリーグ対決」は鹿島に軍配。昨年の教訓を生かして広島を零封 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 代わって入った選手も、自らの役割を十分に理解していた。80分にMF遠藤康に代わってピッチに立ったのはFWの伊藤翔。今大会ですでに4得点を決めている、生粋のストライカーである。しかし、伊藤がこなしたのは追加点を奪うという仕事ではなく、あくまで点を与えないという役割だ。

「向こうが圧力をかけてきたので、人数を割いて守ったほうがいい。僕の位置も、いつもよりも5メートルくらい低かった。何とかセカンドボールを拾って、時間を稼いでという感じだった。もちろん攻められればよかったですし、自分のやりたい仕事ではないですけど、チームとして失点しないことだけが大事だったので、そこを達成できてよかった」

 ホーム&アウェー方式では、アウェーゴールが勝敗を分けることは珍しくはない。ホームチームは、それを許さないことが重要なミッションのひとつとなる。

 鹿島にとっては、優勝を成し遂げた昨年の戦いが教訓となっているだろう。

 ラウンド16から決勝まで、いずれも第1戦をホームで戦い、そのすべてで勝利を収めている。ところが、ラウンド16と準決勝ではアウェーゴールを許し、第2戦の戦いを苦しくした。一方、無失点で抑えた準々決勝と決勝は、第2戦も余裕をもって試合を運ぶことができていた。アウェーゴールに1点以上の重みがあることを十分に理解しているからこそ、広島戦でもリスク管理を最後まで徹底したのだ。

「ホームで戦う試合は勝利と無失点が大事だったので、そこは非常に評価しています」

 狙いどおりのシナリオを演じた第1戦に、大岩剛監督も満足した様子だった。

 一方で、静かな戦いとなった要因は、広島側にも存在していた。

 それは、先制された後の戦いに見出せる。「リスクを負ってアウェーゴールを狙う」。もしくは「第2戦に望みをつなぐために、追加点を与えない」。その二択を迫られたなか、あくまでバランスを保つ戦いを演じざるを得なかったからである。

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