イニエスタではなくポドルスキ。神戸には泥沼脱出の旗手が必要だ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images

 イニエスタ個人は、ボールの受け方や持ち出し方など、才能の片鱗を見せた。しかし、全体のプレー向上にはつながらなかった。

「ルーカス(・ポドルスキ)、アンドレス、ダビド(・ビジャ)は世界チャンピオンになった選手。3人は負けることを著しく嫌う。指揮官がしっかりしていれば、彼らほど頼もしい選手はいないよ」

 リージョはかつてそう説明していた。リーグ戦で6連敗を喫したチームで、3人がどれほどの屈辱感にまみれているか――。それは想像以上だろう。チームは13位まで転落。上位争いをしていたのが嘘のように、最下位との勝ち点差はわずか3だ。

 なにより、プレー内容に出口が見えない。不穏なチーム状態は選手にストレスを与え、しばしばケガ人を出すものだが、鹿島戦では、高い機動力で気鋭の働きを見せていたFW古橋亨梧がケガを負い、戦線を離脱することになった。リージョが去って以来、故障者が増えつつある。思った以上に、選手たちは苦しい状況にいるのだ。

 現状は、勝利によってチームを好転させるしかない。体力も気力も十分と言われるポドルスキに軸を託し、立て直しを図るべきではないか。ビジャは監督交代もあって、まだJリーグのリズムにフィットしておらず、イニエスタは責任感を強めるが、フィジカルに違和感を抱えていると言われる。チームの旗手になれる可能性は、ポドルスキが一番高い。

「NOBLEZA」

 リージョはポドルスキをひと言でこう表現していた。それは、スペイン語で「気品」を意味する。ひとつひとつのプレーに、誰よりも誇り高く、尊厳を持って挑める。荒々しく映る選手だが、指導者が敬意を持ってぶつかれば、その品格の高さを見せるという。左足のキックはリーグでも傑出している。

 その力を引き出すには、指揮官にも相応の品格が必要になる。

 リージョは現在、スペイン・マドリードの自宅に戻っている。いつでも日本で采配を振るう準備はしているという。運転免許証も日本で使用するものが、まだ使えるそうだ。Jリーグのクラブから、いくつか接触もあるという。

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