イニエスタではなくポドルスキ。
神戸には泥沼脱出の旗手が必要だ
不振に喘ぐヴィッセル神戸が、軌道修正をするには――上書きをするか、リセットするか。しかし、簡単には再起動もできない現状だ。
なぜなら、選手だけでなく、多くのスタッフも、前任のフアン・マヌエル・リージョ監督の仕事ぶりに心酔していたからだ。"辞任"を発表したあと、多くの日本人選手が個人的にリージョのもとに来て、「監督を続けられないのか?」と直談判。思わず、涙ぐむ選手もいたという。そしてリージョが日本を離れる最後の日には、数十人の関係者が空港まで見送りに来た。
「このチームにいられたことを、心から誇りに思ったよ。日本を離れる前のスタッフとのフットサルに、わざわざ挨拶に来てくれた選手もいた。正直、胸が熱くなったよ。忘れられない」
リージョは、神戸での最後の日々をそう振り返っている。これだけの別れを、シーズン半ばのチームが昇華するのは容易ではないだろう。
リージョが去ったチームだが、方向性を極端に変えたわけではない。選手も、続けてきたトレーニングは、今はまだ身体が覚えている。しかしながら、ディテールの差は歴然としている。
たとえば、選手同士の距離が悪くなっている。必然的にパスが乱れる、もしくは敵のプレスに引っかかって、カットされる。同時に、トレーニングの変化で立ち位置が劣化し、ボールを持っている相手選手への寄せも甘い。局面的にはいいプレーが出ても、90分間を戦ったときに後手を踏むことになるのだ。
前節の鹿島アントラーズ戦はベンチ外だったルーカス・ポドルスキ(ヴィッセル神戸) 前節の鹿島アントラーズ戦(0-1で敗戦)も、ちぐはぐなプレーが目立った。前の4人のアタッカーにボールが入ると、たしかに脅威は与えた。しかし全体的に距離感が悪いことで、つなぎのところでミスも多く、拙攻を続けている。そして、チーム状況に対する不安がもたらす心理的な問題か、判断が雑で、不必要なファウルにつながった。相手のシュートがバーを叩くなど、守備は何度も崩れていた。
後半途中、アンドレス・イニエスタが交代出場した後も、流れは変わらなかった。
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