2019.05.11

安西幸輝は三竿健斗に先を越されて奮起。
劇的変化で鹿島入りを決めた

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 渡部 伸●写真 photo by watanabe shin

遺伝子~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(42)
安西幸輝 前編 

 マレーシア・ジョホールバルでのACL第5節、グループ最下位のジョホール・ダルル・タクジム対鹿島アントラーズ戦。鹿島は引き分けでグループ突破を決められる状況だったが、試合の主導権を握ったのはホームのジョホール・ダルル・タクジムだった。

 気温28度、湿度88パーセントという気象条件は両チーム同じとはいえ、ホームチームが有利なのは言うまでもない。相手に押し込まれた前半をなんとか0-0でしのいだ鹿島だったが、後半24分に失点し、試合はそのまま終了。鹿島のグループリーグ突破は最終節まで可能性を残したものの、この敗戦で1位突破を逃すことになった。

 ホームでのリーグ開幕戦を落としたものの、3月1日から4月9日まで公式戦8戦負けなし。ゲーム内容が伴わなくとも勝ち点を拾うことができていた。しかし、4月14日のFC東京戦以降の公式戦6試合では2勝4敗と負け越している。

 その理由には、小笠原満男、西大伍、昌子源といった選手の不在が挙げられている。新たなキャプテンとなった内田篤人も負傷離脱している。負傷で言えば、山本脩斗や中村充孝、鈴木優磨、チョン・スンヒョンもいない。三竿健斗も長期離脱から復帰したばかり……。リーダー不在はもちろん、多くの主力を欠いている状態だった(中村とスンヒョンはそれぞれベンチ復帰)。

 前線でのボールロスト、カウンター攻撃への対応の悪さ、セカンド・ボールが拾えない。落ちるシュートやパスの精度……。そんな個人のプレーや判断のミスが生じても、それをチームでカバーすることで、勝利に近づけるが、現在の鹿島は、個人のミスをカバーする組織力も発揮できてはいない。そんな内容の拙さは選手たちも理解し、誰もが危機感を抱いているのは間違いない。「勝たなければ鹿島ではない」という歴史を担いながら、もがいている。

 クラブ創設以来つないできた「勝者のDNA」は、結果が伴わなければ、指揮官や選手を苦しめるものになってしまう。それでも、それを受け継ぎたいと集った男たちは逃げることは許されない。