2019.05.10

「イニエスタを走り回らせても…」。
前監督が示唆した神戸復活のカギ

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images

「自分は、『スペクタクル主義者』としばしば言われる。でも、負けてもいいなんて考えたことはただの一度もない。プロとして勝負に挑む限り、どんな試合でも結果を求める。それは当然のことだ」

 ヴィッセル神戸を率いていたフアン・マヌエル・リージョは、いつものように熱っぽく話していた。

 リージョが監督に就任して以来、神戸は目に見えて好転していった。チームの士気は高まり、「リージョの下でプレーしたい」という選手もやって来て、着実な成長を続けていた。控え組までもが奮起し、ルヴァンカップではグループステージの首位に立った。

 そしてリージョが”辞任”した後、結果は明らかに悪化している。その事実は、揺るぎようがない。

川崎フロンターレ戦を最後に欠場が続いているアンドレス・イニエスタ では、神戸は活路を見出せるか。リージョの言葉から答えを探す――。

「(神戸は)自分たちがボールを持つことによって、アドバンテージを作れる」

 リージョはそう説いている。

「着目すべきは、我々にはアンドレス(・イニエスタ)という唯一無二の選手がいる点だろう。彼はまるで、サッカーそのもののような選手。何が優れている、というレベルではない。チームとして、彼が最高のプレーができるかを突き詰めるべきだろう。まず、ボールが行ったり来たりするような展開にしてはならない。アンドレスを走り回らせても、勝利には結びつかないのだ」

 イニエスタは芸術的なイメージが強いが、実は走れる献身的なMFでもある。1試合平均11~12kmを走破。Jリーグでも、上位と言える数字だろう。常に正しいポジションを取って、サポートに入れるだけに、必然的に距離が出るのだ。

 しかし、バルサ時代はひとつの真理があった。

<アンドレスが走っている距離が長くなる時はボールが走っていない証拠。バルサのプレーはうまくいっていない>

 イニエスタが無駄に走り回る。それは凶兆だろう。今月で35歳になる彼にとって、肉体的な消耗は想像以上に激しい。走れば走るほど、その肉体は限界を超え、最悪なことにチームは冴えを失う。