神戸はイニエスタの奮闘虚しく4連敗。喪失感から選手に漂う疑心暗鬼 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by KYODO

 しかし神戸は前半15分、川崎の馬渡和彰に見事な直接FKを叩き込まれてしまう。先制点を奪われると、神戸は弱みを見せ、劣勢に立った。 張りぼてが露わになって、選手間の距離の悪さからパスもつながらない。

 前半37分、イニエスタが中盤に落ち、ボランチの山口蛍にボールをつけようとしたが、わずかにずれ、そのままボールを失うと、ショートカウンターを浴びる。守りの人数は揃っていたが、ダンクレーが前に出たところ、その裏にパスを通され、セルジ・サンペールがついていけない。体を離し、知念慶に楽々とシュートを打たれ、これはGKキム・スンギュがどうにか弾いたが、小林悠に押し込まれた。プレーはことごとく後手に回った。

「立ち上がりは悪い印象はなかった。でも、徐々に相手ペースになってしまい、失点を許した。そしてビルドアップでバタバタし......」(神戸・吉田孝行監督)

 神戸は前半を、漫然と過ごしている。右サイドはほとんど機能していない。なんの改善策も示せなかった。

 それでも後半、彼らは徐々に攻勢に転じている。川崎が全体のラインを下げたことで、押し込めるようになった。いくつか、決定機も作っている。

 82分、獅子奮迅のイニエスタが右サイドにボールを引き出し、左足でクロス。GKを誘い出し、処理しきれなかったボールを、交代出場の郷家友太が拾って横パス。古橋亨悟が追撃弾を決めた。

 しかし、一矢を報いるのが精一杯だった。

 1-2で敗れた神戸は4連敗、順位は12位まで下がっている。一時は首位争いをしていたが、今や降格回避の争いに飲み込まれつつある。

 深刻なのは、敗北という結果以上に、選手の意識だ。

 リージョの「不在の在」。スペイン人監督に心酔してきた選手たちにとって、今の状況はまだ受け入れられていない。リージョの指導で代表に復帰した西大伍、山口蛍は目に見えて精彩を欠いていた。セルジ・サンペールはよく走るし、パスは鮮やかだが、素人のような守備で悪目立ちしている。各選手が長所を出せず、自信を失いつつある。

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