イニエスタが「バルサのようだ」と言った直後、指揮官は神戸を去った

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 今シーズン開幕以来、フアン・マヌエル・リージョが率いたヴィッセル神戸は、戦いの形を成熟させつつあった。

 ところが、開幕後にバルセロナから移籍してきたスペイン人MF、セルジ・サンペールが先発に名を連ねるようになって、失点を重ねている。第5節のガンバ大阪戦は3失点、第6節の松本山雅戦は2失点、そして第7節のサンフレッチェ広島戦は4失点。得点数は増したが、それ以上に守備の乱調は明らかだった。

 サンペールは1年以上、公式戦から離れていた。簡単に背後へボールを通され、シューターに対する寄せも甘かった。守備の負担を周りに強いていた。

「どうして無理にサンペールを使うのか? 寄せが甘く、背後へボールを通されている。明らかに攻守のバランスが悪くなっているよ」

 広島戦後、筆者はSNS通信アプリでリージョ監督へメッセージを送った。

「セルジを起用する理由は、いくらでも説明がつくぞ」

 リージョは、数分間の音声メッセージで饒舌に答えている。

「セルジは長い間、実戦から離れている。それだけに、試合勘はたしかにない。でも、あいつは誰よりもボールを速く走らせることができる。角度をつけ、ボールの流れを変えられる。自分はそのプレーを叱咤激励している。思った以上のセンスで、必ずこれからアジャストし、成果を出すはずだ」

監督交代後、初めての試合だった浦和レッズ戦に敗れた神戸の選手たち監督交代後、初めての試合だった浦和レッズ戦に敗れた神戸の選手たち しかし4月17日、リージョは監督を"辞任"している。すでに監督は交代。スペイン人指揮官は未来の戦いを見据えていたが......。

「バルサ化」

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