王者・フロンターレ復調のバロメーターは
攻撃よりも守備にある (2ページ目)
その大島が意識していたのは、相手の裏のスペースである。
「敵を見ながら、味方も見ながら、うまくやれた時間帯があったと思います。裏を取ろうというのは練習でもやってきたので、その意識を持って全員がプレーできていた」
ボールを回しながら、焦れた相手を食いつかせて、裏を取る。この日、川崎が奪った2得点は、いずれもこの形からだった。ゴール前に枚数をかける相手を攻略するための、お手本のようなゴールだった。
また、このボール支配をより高められた要因は、守備の安定だろう。この日の川崎は、ボールを失ってもすぐに奪い返す出足の鋭さが光った。切り替えのタイミングを狙い、再びマイボールとする。せっかくしのいでも、またしても攻められる。湘南の選手にとっては地獄のような展開だったに違いない。
つい2週間前のセレッソ大阪戦では、守備時におけるポジショニングが曖昧で、中盤と最終ラインの間にスペースを生じさせていた。その空間を柿谷曜一朗に突かれて先制点を奪われたが、この試合では2ラインのコンパクトさが保たれ、即時奪回も実現。ピンチらしいピンチがほとんどなかったのも、完勝のイメージを色濃くした。
攻撃スタイルが持ち味の川崎だが、昨季は最多得点だけでなく最少失点も記録したように、守備の安定感が調子のバロメーターと言えるかもしれない。
「チャンスも多く作れたし、いいサッカーができていた。ボールを保持しながら相手陣地に押し込んで、取られたらすぐに切り替えて、奪い返すこともできた。よくなっているという手応えはあります」
小林が言うように、開幕当初の停滞感は払拭され、ようやくエンジンがかかってきたと言えるのではないか。
もっとも、「王者復活」と見出しを打つのは早計だろう。なぜなら、サッカーとは相手のあるスポーツである以上、相対的に物事を考える必要があるからだ。
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